単なる風邪のような症状が、自分の意識を奪うまでに悪化していったとしたら――全米ベストセラーの衝撃の実話が映画化『彼女が目覚めるその日まで』

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2017/12/16

原作『脳に棲む魔物』(著:スザンナ・キャハラン、訳:澁谷正子/KADOKAWA)

 もしもある日突然、自分に正体不明の病が降りかかったとしたら。単なる風邪のような症状が、みるみる自分の意識を奪うまでに悪化していったとしたら――。
 NYタイムズ・ベストセラー・ノンフィクション第1位の実話が、『キック・アス』のクロエ・グレース・モレッツ主演、シャーリーズ・セロン製作で映画化。“愛と感動の難病もの”という形容では表現しきれない、センセーショナルな内容が早くも話題を呼んでいる。12月16日(土)より全国ロードショー。

 新聞社に勤める21歳のスザンナは、仕事にも恋愛にも張り切る今時の女子。忙しくも平凡な毎日を送っていた彼女に突然“それ”はやって来る。風邪のような症状、物忘れ、精神的不安定、幻覚、幻聴、不眠。若く美しい女性だからこそ、周囲は“奇行”とは思っても“病気”とは思わない。ついに全身が痙攣する激しい発作を起こし入院するが、検査結果はことごとく「異常なし」。病院でたらい回しにされる中、症状はみるみる悪化。心身に混乱をきたし会話もできなくなった彼女に医師は精神科への転院をすすめるが、家族と恋人は精神系の異常ではないと信じていた――。

 やがて、ある医師の粘り強い探究心によって病名が判明する。名作ホラー映画『エクソシスト』のモデルになった実在の少年もこの病の典型的な症例だったと言われる「抗NMDA受容体脳炎」。2007年に初めて発見され、原作が書かれた当時も病名は全く知られていなかった。この病気が明らかになるまでのミステリーのような展開が本作の見どころ。同時に、主人公の“どんどん自分がわからなくなる恐怖感”は衝撃的だ。

試写会イベントで登壇する原作者スザンナ・キャハラン

 原作ノンフィクション『脳に棲む魔物』の著者スザンナ・キャハランはジャーナリスト。実際に2009年、24歳の時にこの病に苦しんだ。完成した映像を「この病気の本当に辛い部分、そしていかに怖いものかという部分をとてもうまく描いてくれた」と評価。「クロエは精神病のような症状や発作が起こった時などの様子を、本気になって取り組んでくれた。病状を正確に演じるところにこだわりを持ってくれたので、安心して任せることができた」と喜んだ。公開に先駆けて東京・飯田橋で行なわれた試写会イベントでは、「闘病中はどん底だった。映画化をきっかけにこうして東京に来られるなんて夢のよう。感謝しかない」と挨拶。現在リハビリ中という同じ病気の患者会の女性から「この病気にかかって、大変なことがたくさんあったが、よいこともあった」という声があがると、「私は自分の体験を客観視できるまでに数年かかった。昨年大変な闘病をしたあなたが今『よいこともあった』と言えること自体がすばらしい。自分の場合は、この病気について世界に知らしめていくという使命が生まれたこと、目的意識を持って生きていく決断をできたことが『よいこと』だ」と語った。

 上映時間89分がまさにあっという間の本作。原作はさらに本格ホラー小説を読むかのような濃厚なスリルを味わうことができる。ジャーナリストの筆によるからこその客観性が、主人公や周囲の恐怖感に強烈なリアリティを与えてもいる。統合失調症や双極性障害と診断されがちというこの病気の、誤解が誤解を生む恐ろしさ。回復までに数年かかっても不思議ではないという重篤さ。主人公を支えた家族や恋人の愛の物語であると同時に、健康な自分に突然“病気”そして“狂気”がやってきた時、果たして己の人生を呪わずに生きていくことができるかと問いかけられる1冊だ。原作ノンフィクションが社会に与えたインパクトは大きく、今でもスザンナのもとには毎日メールが届く。日本でも現在、年間1000人ほどが発症するという。


■『彼女が目覚めるその日まで』
2017年12月16日(土)全国ロードショー
配給:KADOKAWA
公式サイト:http://kanojo-mezame.jp/
(C)2016 On Fire Productions Inc.