17匹の最期を看取った「猫のプロ」が語る「お祝いできる死」の迎え方とは?

ライフスタイル

2018/1/12

『猫の學校2・老猫専科』(南里秀子/ポプラ社)

 長寿高齢化は今や、人間だけの問題ではない。外猫5歳、家猫10歳と言われていた平均寿命は15歳と大幅に延びている(2016年、ペットフード協会発表)。愛猫が長生きすることは、飼い主にとっては嬉しいことだが、長くともに暮せば暮らすほど気持ちのつながりは強まり、その別れの辛さも増すし、病気や介護の問題も出てくる。

 “家族”であればこそ、長生きしてほしいが、ペット医療の高度化は、高額な治療費のみならず、どこまで治療し続ければいいのかという「限界の見極め」を難しくし、飼い主たちを悩ませている。つい先日、私も飼い猫を看取ったが、最後の最後まで、延命と自然死のどちらが猫にとって幸せなのか悩み続けた。猫の高齢化の問題は、今やお金の問題だけではなく、人と猫の「死生観」の問題になっているのではなかろうか。

 『猫の學校2・老猫専科』(南里秀子/ポプラ社)は、猫の旅立ちに際して人はどうあればいいのか、「いのちの意味とは何か」を考えさせてくれる一冊だ。

 著者・南里秀子さんは、25年前にキャットシッターを始め、延べ5万匹以上の猫たちと出会ってきた経験をもとに、2009年に「猫の學校」というセミナーを始めた。その詳細は『猫の學校 猫と人の快適生活レッスン』に詳しいが、キャットシッター目線のノウハウを南里さんは教えてくれる。基礎編ともいうべき「猫の學校」に続く、上級編「老猫専科」は、猫の健康や別れへの不安といった、老猫と暮らす人たちの切実な声を受けて始まった。

 猫の老いについての考え方、老猫の健康や病気に関する具体的な講義、猫を見送った後に飼い主がすべきことなど、知っているようで知らないこと、現場で数多くの猫と接してきた南里さんならではの知恵と知識、そして考え方を学ぶことができる。

■猫にとって延命は幸せなのか?

 中でも、「猫たちの旅立ちから學ぶ」に注目したい。本書には、南里さんが見送ってきた「17匹の猫たちの“十猫十色”の旅立ち」の記録とともに、南里さん自ら、老猫との向き合い方、見送り方を模索してきた経験が語られている。

 慢性腎不全でミン(21歳)とズズ(22歳)を見送った後、りゅうりゅう(16歳)が眠っている間に亡くなった。自然で穏やかな死を目の当たりにした南里さんは、ミンやズズのように「必死に抵抗する猫を強引に通院させ、興奮状態で血液検査を受けさせる意味があるのだろうか?」と疑問を抱いた。りゅうりゅうの翌年、星男(21歳)が、数日間食事を断った後に穏やかに亡くなったときには「よく生きたね、おめでとう」という気持ちになった。「お祝いできる死もある」「誕生と同じように死を祝いたい」――それが、南里さんが辿り着いた答えだった。

■猫が望むものを感じとる

 病気よりも辛い治療なら「そっとしておいてほしい」。
 安心して甘えられる人に「そばにいてほしい」。
 注射や点滴よりも「なでてほしい」。
 「悲しまないでほしい」……老猫の自分は価値がないの?

 12歳以上の「老猫」においては――延命を絶対とするのではなく、その命の自然なあり方に寄り添うことで、「猫が望むもの」を感じとることが大切だと南里さんは言う。

 猫は病気やケガをすれば自分なりに適応し、暮らし方を調整できるし、逝くときも自分で決める。その意思のあり方は、猫に限ったことではなく、人間もまた同じだ。

「どう死を迎えたいか」は、すなわち「どう今を生きるか」である。だからこそ、「猫の生きる力を信じる」こと、「猫を信頼すること」が、飼い主であり家族であるあなたに求められることなのだと。

 本書を読んで、南里さんが闇雲に医療を否定しているのではなく、その猫の生き方と向き合い、最適な方法を感じとってやることが、一番の幸せを見つける道なのだと、私は受け取った。

■血液検査で自分の猫の老いを知る

 今、猫と暮らしている人、老猫の治療や介護に迷いや悩みを抱えている人は、本書をぜひ読んでみてほしい。本書には「老いを知る」「キュア(治療)からケア(看護)へ」といった実践的なノウハウも記されているし、猫を看取った後にあなたがすべきこともわかりやすくまとまっている(特に、動物の火葬場や業者などは、哀しみの中で探したり選んだりするのは難しいので、元気なうちにある程度準備しておきたい)。

 これは私の経験の話で恐縮だが、まずは「自分の猫の老い」を知るために、一度、病院で血液検査などを行うことを勧めたい。健康状態を飼い主の直感で推し量るのではなく、一度はきちんと把握した上で、あなたの家族である猫が「どうしたいのか」を、ゆっくり猫と話し合ってほしい。その時、「老猫」は「朗猫」に変わる。

 そして、「お祝いできる死」を迎えられるよう、ともに今を生きてほしいと願って止まない。

文=水陶マコト