17匹の最期を看取った「猫のプロ」が語る「お祝いできる死」の迎え方とは?

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更新日:2020/5/11

『猫の學校2・老猫専科』(南里秀子/ポプラ社)

 長寿高齢化は今や、人間だけの問題ではない。外猫5歳、家猫10歳と言われていた平均寿命は15歳と大幅に延びている(2016年、ペットフード協会発表)。愛猫が長生きすることは、飼い主にとっては嬉しいことだが、長くともに暮せば暮らすほど気持ちのつながりは強まり、その別れの辛さも増すし、病気や介護の問題も出てくる。

 “家族”であればこそ、長生きしてほしいが、ペット医療の高度化は、高額な治療費のみならず、どこまで治療し続ければいいのかという「限界の見極め」を難しくし、飼い主たちを悩ませている。つい先日、私も飼い猫を看取ったが、最後の最後まで、延命と自然死のどちらが猫にとって幸せなのか悩み続けた。猫の高齢化の問題は、今やお金の問題だけではなく、人と猫の「死生観」の問題になっているのではなかろうか。

 『猫の學校2・老猫専科』(南里秀子/ポプラ社)は、猫の旅立ちに際して人はどうあればいいのか、「いのちの意味とは何か」を考えさせてくれる一冊だ。

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 著者・南里秀子さんは、25年前にキャットシッターを始め、延べ5万匹以上の猫たちと出会ってきた経験をもとに、2009年に「猫の學校」というセミナーを始めた。その詳細は『猫の學校 猫と人の快適生活レッスン』に詳しいが、キャットシッター目線のノウハウを南里さんは教えてくれる。基礎編ともいうべき「猫の學校」に続く、上級編「老猫専科」は、猫の健康や別れへの不安といった、老猫と暮らす人たちの切実な声を受けて始まった。

 猫の老いについての考え方、老猫の健康や病気に関する具体的な講義、猫を見送った後に飼い主がすべきことなど、知っているようで知らないこと、現場で数多くの猫と接してきた南里さんならではの知恵と知識、そして考え方を学ぶことができる。

■猫にとって延命は幸せなのか?

 中でも、「猫たちの旅立ちから學ぶ」に注目したい。本書には、南里さんが見送ってきた「17匹の猫たちの“十猫十色”の旅立ち」の記録とともに、南里さん自ら、老猫との向き合い方、見送り方を模索してきた経験が語られている。

 慢性腎不全でミン(21歳)とズズ(22歳)を見送った後、りゅうりゅう(16歳)が眠っている間に亡くなった。自然で穏やかな死を目の当たりにした南里さんは、ミンやズズのように「必死に抵抗する猫を強引に通院させ、興奮状態で血液検査を受けさせる意味があるのだろうか?」と疑問を抱いた。りゅうりゅうの翌年、星男(21歳)が、数日間食事を断った後に穏やかに亡くなったときには「よく生きたね、おめでとう」という気持ちになった。「お祝いできる死もある」「誕生と同じように死を祝いたい」――それが、南里さんが辿り着いた答えだった。