『おお振り』を読んだ時の感動が再び……! ラグビーってこんなに面白いのか!

文芸・カルチャー

2018/1/19

『Go Forward!櫻木学院高校ラグビー部の熱闘』(花形みつる/ポプラ社)

 読みごたえ抜群だった。登場人物たちの熱気、著者の情熱、それらが文章からひしひしと伝わり、読者も宿敵の相手に勝利を収めた試合を終えた後のような、爽快感と疲労感が得られる『Go Forward!櫻木学院高校ラグビー部の熱闘』(花形みつる/ポプラ社)。

 私が学生時代にドハマりして、今なおアニメ第3期を心待ちにしている野球マンガの『おおきく振りかぶって(おお振り)』を読んだ時の衝撃が蘇ったほどだ。

「スポーツ最高!」「高校生男子が感情をむき出しにしながら仲間と協力して勝利を目指す姿が素晴らしく泣ける」「この競技のこと、もっと知りたい!!」……あの時の「熱狂」を思い出させてくれる名作と言っても過言ではない(『おお振り』が古ければ『弱ペダ』をイメージしてほしい)。

 本作は、多くの読者を熱中させ、ラグビーへの興味を強めてくれること間違いなしの青春スポ根小説だ。

 大学卒業したての新米(臨時)教師、酒田公男(さかた・きみお)は、根っからのラガーマン。生真面目で口下手。筋肉は裏切らない。問題が起こったら、頭より身体でぶつかっていく。 彼はとある理由から、覚悟のないまま教師になった。若き理事長の実日子(みかこ)に半ば脅されるような成り行きで、おっとりした裕福な子息が集まる私立櫻木学院でラグビー部を立ち上げる。

 酒田のアピール下手も一因となり、ラグビー部に入部する生徒はゼロ。ラグビーを愛する酒田は途方に暮れるが、そんな時、学校一の秀才・高校3年生の司馬(しば)が入部してくる。元サッカー部であり、東大合格も確実視されるほどの頭脳を持つ彼は、熱血だが「作戦下手」の酒田のサポートをして、ラグビー部員を集める。

 だが、入部してきたのは、個性的過ぎる2年生や、酒田が体格を見込んでスカウト――ストーカーまがいの行動の結果、入部させた――したが、運動経験もない気弱なおデブちゃんの1年生などなど、一筋縄でいかない生徒ばかり。

 酒田は、そんなラグビー初心者の問題児と共に、部をもり立てていくべく奮闘する。それによって新米教師の酒田自身も成長していき……という胸熱の物語だ。

 本作は、とにかく登場人物たちが多彩で、魅力的である。最終的に「出てくるやつみんな好き!!」という気持ちなる(少なくとも一人は「推し」ができるはずだ!)。

 頭も顔もよくて運動もできるキャプテン司馬は、酒田の至らないところもフォローする完璧高校生。けれど心の裏には、純粋にラグビーをやりたいという気持ちではなく、ある思惑があったり……。

 友達もいない「ただの陰気なデブ」だったプー(本名は長衛富太郎)は、「しんどい」「やめたい」と苦しみながらも、練習や友情を通して成長していったり。

 また、ラグビー経験者であり、自らもラグビーを続ける意志がありながら、親の都合で部活動ができない、ちょっと生意気な1年の国東(くにさき)。暴力沙汰でバスケ部を退部させられた猪突猛進バカの浪岡。女の子大好き茶髪のイケメン矢来。潔癖症の元剣道部。スーパー留学生……などなど、実に多くのキャラクターたちが登場する。

 そして彼らは、お互いの存在によって成長していく。

 もちろん、キツイ練習やラグビー合宿の聖地だという菅平での合同生活、初勝利、完膚なきまでの敗北などの「経験」も、成長に欠かせない出来事ではある。 だが、成長につながる「裏」には、必ず「仲間」の存在があるのだ。本作は、その「仲間」との関係が丁寧に描かれていた。

 学生時代(現役でもいいが)、スポーツをやっていた方は、大いに共感できるだろう。苦楽を共にした仲間との絆、その仲間のおかげで成長した経験などを思い出し、青春の日々を振り返るきっかけにもなると思う。 スポ根とは無縁で、本音をぶつけ合うような人間関係をあまり経験していないインドア人間(私です)には、「人という字は人と人とが支え合ってできている」という金八先生の言葉が改めて胸にくる。

 著者自身、ラグビーにハマり、なんと3年に及ぶ取材を経て、本作を執筆したそうだ。それを聞いて、納得した。内容の「展開」や「濃密な描写」は、「その場にいた人」しか書けない「熱」を発している。

 2019年にはラグビーワールドカップが日本で開催される。ハマるなら今だ、ラグビー!

文=雨野裾