ミステリーランキング3冠! 緊迫する極限状況下での連続密室殺人を描く話題作『屍人荘の殺人』

文芸・カルチャー

2018/3/31

『屍人荘の殺人』(今村昌弘/東京創元社)

 第27回鮎川哲也賞を選考委員の絶賛をもって受賞した今村昌弘のデビュー作『屍人荘の殺人』(東京創元社)。本格ミステリーらしからぬ驚愕必至の衝撃的な展開と本格ミステリーならではの論理的で魅力のある謎解きが話題になり、「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」「週刊文春ミステリーベスト10」という3つのミステリーランキングで第1位を獲得するという快挙を成し遂げ、さらに本屋大賞にもノミネートされている注目作品だ。

 物語の語り手となるのは神紅大学1年生の葉村譲。ミステリ愛好会会長の明智恭介に誘われて同会に所属することになった彼は、暇さえあれば明智と一緒に他愛もないことで推理勝負をして遊んでいた。明智は“神紅のホームズ”という異名を持ち、解決すべき事件を求めて映画研究会の夏合宿に参加しようと画策するも失敗。しかし、同じく神紅大学の探偵少女として知られる剣崎比留子が映画研究部の会長と話をつけて、明智と葉村は合宿に参加できることになる。剣崎によると、去年の合宿参加者のひとりが自殺していて、部室に「今年の生贄は誰だ」と書かれた脅迫状が届けられていたという。

 合宿が行われるのはS県の娑可安(さべあ)湖畔にあるペンション「紫湛(しじん)荘」。そもそも合宿の本来の目的は、映画撮影を名目にした部内コンパで、今年は脅迫状騒ぎで参加者が激減したものの、紫湛荘オーナーの息子の映研OBとその友人、現役の映研部員、常駐する管理人を合わせて14人が集まった。合宿初日、おりしもペンションの近くでは大規模なロック・フェスティバルが開催中で娑可安湖畔は大勢の人で賑わっていたが、そんな喧騒をよそに心霊動画撮影、バーベキュー、肝試しとスケジュール通りに合宿は進んでいく。しかし、肝試しの最中に不測の事態が発生、紫湛荘は全員が生きるか死ぬかという極限状況のなかで孤立。さらに連続殺人が起きて――。

 ミステリーの舞台として設定される嵐や雪で外界と隔絶された環境を“クローズド・サークル”と呼ぶ。本作も「孤立したペンションで起こる連続殺人」という典型的なクローズド・サークルものなのだが、そのペンションを孤立させる要因がとにかく斬新で、作品の世界観を一変させるような思いも寄らぬ展開に、いい意味でちょっと呆然とさせられてしまう。「これ、いったいどうなるの!?」とワクワクしながら読み進めていくうちに発生する連続殺人もまた奇妙な謎に満ちている。誰もが死に直面している危機的な状況で、なぜ犯人は殺人を犯すのか。全員が巻き込まれた絶体絶命の事態と次々と起こる殺人の謎が密接に絡み合い、その緻密なトリックがロジカルに解き明かされていく過程はまさに興奮もの。読者の予想を超える奇想と恐怖に満ちたパニック・ホラー的展開にミステリー好きなら思わず自分でも推理したくなる本格的な謎解きの面白さを見事に融合させた破格の作品だ。物語の終わりは続編に含みを持たせおり、次はどんな衝撃を見せてくれるのか、すでに期待は高まる。

文=橋富政彦