福山雅治主演、ガリレオシリーズの金字塔『容疑者Xの献身』! 完全犯罪とその裏に隠された愛の物語

文芸・カルチャー

2018/5/21

『容疑者Xの献身』(東野圭吾/文藝春秋)

 福山雅治主演で、ドラマとして、映画として、大人気を集めた「ガリレオ」シリーズ。捜査一課から慕われ、「ガリレオ先生」と呼ばれるほど、天才的な頭脳を持つ物理学者・湯川学の、クール、かつ、鮮やかに事件を解決していく姿は、映像作品のみならず、東野圭吾氏の原作小説のシリーズでも今もなお根強い人気を誇っている。

 いつも冷静沈着に事件を解決していく「ガリレオ」湯川学。そんな彼が唯一冷静ではいられなかった事件をご存じだろうか。『容疑者Xの献身』は、ガリレオシリーズ第3弾。直木賞受賞作であり、映画化でも大きな話題となったこの作品で描かれるのは、湯川の大学時代の親友であり、ライバルである天才数学者が引き起こした完全犯罪だ。天才 vs. 天才の戦い。徐々に友人への疑いを深めていく湯川の葛藤。事件の裏にあったのは、あまりにも純粋な愛の姿だった。

 天才的な数学者でありながら、高校教師に甘んじていた石神哲哉。不遇な毎日を送っていた彼の心の支えとなっていたのは、アパートの隣に娘とともに越してきたシングルマザーの花岡靖子への思いだった。ある日、靖子は、アパートを訪ねてきた元夫・富樫慎二を娘とともに衝動的に殺してしまう。困り果てる母娘。そんな彼女たちに石神は救いの手を差し伸べる。

 石神は母娘に言う。「私を信じてください。私の論理的思考にお任せ下さい」。そうして、死体の始末を請け負うだけでなく、母娘に警察が来た場合の応対の仕方を事細かに指示するのだ。やがて、旧江戸川で発見された男の死体。崩れそうで崩れない母娘のアリバイ。草薙刑事から事件の相談を受けた湯川は、石神が事件に深く関わっているのではと疑念を抱き始める。

「その頭脳を……その素晴らしい頭脳を、そんなことに使わねばならなかったのは、とても残念だ。非常に悲しい。この世に2人といない、僕の好敵手を永遠に失ったことも」

 湯川は、今まで、感情というものをここまで表に出す人間ではなかった。だが、この事件は違う。この事件は彼の心を痛いほど苦しめ、彼を思い悩ませる。親友の意思は尊重したい。しかし、それでは彼の靖子への「献身」的な思いは永遠に伝わることはない。親友を思いやる湯川の葛藤の裏には、驚くべき真実があった。

 石神がしたことは決して許されることではない。しかし、物語の真実を知った時、誰もがその深い愛情に驚かされることだろう。真実の愛の姿とは、何の見返りも求めないものをいうに違いない。だが、人間はなかなかそう上手く人を愛することができない。何の見返りも求めず、靖子に「献身」する石神。私たち読者は、物語の終盤に至るまで、石神という男を正しく理解していなかったのだという事実に気づかされる。こんなに純粋に人を愛することができる彼が巻き起こした事件は、あまりにも切ない。

 愛とは。恋とは。友情とは。この本は、ガリレオシリーズの金字塔。まだ読んでいないのだとしたら、こんなにもったいないことはない。湯川が天才と認めた男が企てた完全犯罪と、その裏に隠されたあまりにも切ない愛の物語に、あなたは必ず胸打たれるに違いない。

文=アサトーミナミ

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