“5股のダメ男”高良健吾ד怪物女”城田優 伊坂幸太郎初ドラマ化作品『バイバイ、ブラックバード』原作のポイント

文芸・カルチャー

2018/5/2

『バイバイ、ブラックバード』(伊坂幸太郎/双葉社)

 二度と会えなくなってしまう前に、きちんと「さよなら」だけは告げておきたい。伊坂幸太郎氏の『バイバイ、ブラックバード』(双葉社)は、5股をかけていたダメ男が恋人たちに別れを告げていく物語。

 太宰治の絶筆『グッド・バイ』に影響を受けた作品で、「複数の女性と同時に付き合っていた男が、全く恋愛関係になかった女性の協力を得て、関係を清算していく」という話の筋は共通している。

 だが、太宰作品で主人公の「別れ行脚」の相棒となった女は、“絶世の美女”だったのに対し、伊坂作品で描かれる相棒は、「身長190cm、体重200kg、金髪でハーフ」の“怪物女”。高良健吾が“ダメ男”を城田優が “怪物女”を演じ、2018年WOWOWプライムで伊坂作品としては初めて連続ドラマ化された。

 主人公は、5人の女性と交際している男・星野一彦。怪しい組織から多額の借金を抱えていた彼は、借金のかたとして、近いうちに、「とてもじゃないけど人間の生活が送れない」場所に連れ去られることになってしまった。その見張り役として、彼のもとを訪れた“怪物女”繭子に、星野は連れ去られる前にせめて「五人の恋人たちに別れを告げたい」と懇願。

 5人の女たちを訪ねては、「繭子と結婚することにした」と嘘をつき、別れを告げることになった。

 どこにでもいるような普通のOL。一児の子を持つシングルマザー。奇抜な発想ばかりの天然女。何もかも数字や計算で割り出そうとする女。有名女優…。5人の恋人たちはどんな反応をするのだろうか。そして、星野にはどんな未来が待ち受けているのか。

 星野は、幼少期に母親が出先で交通事故に遭って死んでしまい、待たされることの心細さを身をもって知っている。だからこそ、5人の女たちにきちんと別れを告げたいと思ったようだが、女たちへの真摯な向き合いかたは「5股をかけていた」という事実はあっても、とてもまっすぐだ。

 そんな彼のお目付役である繭子は見た目の恐ろしさだけではなく、性格まで凶暴。「常識」「愛想」「悩み」「色気」「上品」など、自分に必要のない単語を黒く塗りつぶした“マイ辞書”を持っており、常軌を逸した行動をとっては、一彦の恋人を苦しめることを楽しんでいる。

 しかし、「ダメ男」にしても、「怪物女」にしても、物語が終わる頃には共感の念が浮かんでくる。伊坂氏の作品だからこそのあたたかさがこの物語にはある。

 出会いの数だけ別れがあるのだから、出会いだけではなく、別れのひとつひとつも大切にしたい。星野がどんな姿勢で女たちと向き合ったのか。物語の結末を、小説でもドラマでもぜひ見届けてほしい。

文=アサトーミナミ