現代版「ブラック・ジャック」!? どんな手術も受ける天才美容外科医とワケあり患者

文芸・カルチャー

2018/5/29

『リアルフェイス』(知念実希人/実業之日本社)

 美しくになるために、健康な身体にメスを入れることは間違っているのだろうか。美容整形には批判がつきものだ。だが、手術によって、患者が新しい人生をいきいきと生きられるのならば、きっと悪いことではない。

 知念実希人氏の『リアルフェイス』(実業之日本社)は天才美容外科医の周囲で巻き起こる事件を描き出した医療サスペンスミステリー。本作は2015年刊行の『改貌屋』に加筆・修正されたものだ。知念氏といえば、「天久鷹央の推理カルテ」シリーズや『優しい死神の飼い方』、『仮面病棟』など、現役医師ならではの見識に裏打ちされた著作で知られる。

 今回、舞台となるのは、賛否両論ありがちな美容形成外科の世界。金さえ積めばどんな手術でも引き受ける、まるで「ブラック・ジャック」のような天才外科医と、そんな彼の姿に疑問を覚える麻酔科医。個性的な患者たちと、不可解な事件。物語がどう展開するのかは予測不能。一気読み必至の新感覚ミステリーがここにある。

 主人公は、麻酔科医・朝霧明日香。彼女は、恩師の紹介で、天才美容外科医・柊貴之のクリニックで働くことになる。彼のもとを訪れる患者は一風変わった人間ばかり。いまの妻の顔を亡き元妻の顔に変えてほしいという巨大企業会長。2億円もの金を横領した息子の顔を整形で別人にしてほしいというヤクザの組長。7回も美容形成手術を受けているというのに、もっと美しい顔にしてほしいという女優…。どれほど倫理的に問題がある手術でさえ、金さえ積めば引き受ける柊の姿に反発を覚える朝霧だが、次第に、柊の行う手技の鮮やかさに惹き込まれていく。だが、柊のもとで働くのにも慣れてきたある日、彼女に1人のジャーナリストが声をかけてくる。なんでも、柊は、4年前に起きた整形美女連続殺人事件に関係しているようで…。柊の過去に何があったのか。物語はおもわぬ方向へ進んでいく。

「そうか。それは残念だ。私の腕なら、君の田舎者丸出しの垢抜けない顔も、誰もがうらやむような美貌に変えてあげられるのに」

「私はね、自分のことが大っ嫌いなんだよ。いや嫌いなんて言葉じゃ言い表せないな。自分を…憎んでいるんだ。だからこそ、私は彼女の気持ちがわかるし、私なら彼女を救えるかもしれない」

 歯にきぬ着せぬ物言いの柊の姿に最初は、朝霧同様、困惑させられることだろう。だが、次第に、独自の美意識をもとに患者に手術を施していく柊のことが憎めなくなってくる。そして、彼の過去に何があったのか知りたくてたまらなくなる。物語にちりばめられた数々のピースが最後に1つの像を結んでいくのは、この小説だからこそ味わえる快感。あなたもこの新感覚の医療ミステリーをぜひ味わってみてほしい。

文=アサトーミナミ