【恋愛依存症】「今度の恋は上手くいく!」というセリフに隠された恐ろしいワケ

恋愛・結婚

2018/6/18

『恋愛依存症』(伊東明/実業之日本社)

 なぜあんな男と付き合い続けるのか。なぜいつも女性にダマされて終わるのか。そんな苦しい恋愛を繰り返してしまう人々がいる。そして新しい恋が始まる度に「今度の恋はきっと違う!」と希望を口にし、しばらく付き合い続けた後、またいつものパターンに陥ってしまう……。

 彼ら彼女らは本当に恋愛が下手なんだろうか。パートナーを見抜く力がないのだろうか。いや、実はそんなパートナーを選ぶ本人も何かしら問題を抱えているのではないだろうか。そんな疑問に答える書籍がある。『恋愛依存症』(伊東明/実業之日本社)だ。

 本書を読みこむと、いつも辛い恋愛を繰り返してしまう人には、心のどこかに逃れられない苦しみがあることがわかる。そしてその苦しみを抱えた者同士が、歯車がかみ合うように引き寄せ合ってくっつき、お互いに依存し合う様子が描かれている。

■共依存者が抱える苦しみとトラウマ

 本書では、心理学者である伊東明先生が、主に4つの苦しみを抱える人々を解説している。苦しい愛から抜け出せない「共依存」、幸せになるのが怖い「回避依存」、愛の刺激にはまる「ロマンス依存」、苦しみを性愛でしか癒せない「セックス依存」。伊東先生はこれらを総合して「恋愛依存症」と称し、彼らの本質と行動パターン、そして最後にはこの苦しみから抜け出す10のステップを紹介している。

 この記事では、共依存を抱える人の特徴、そして共依存者が強く引きつけられる回避依存者について、ほんの少しだけ紹介したい。

 まず、共依存を抱える人が陥りがちな恋愛には典型的なパターンがある。優しかった恋人が暴力をふるうようになったにもかかわらず、なぜか別れられない。毎回ヒモ男と付き合って同棲、というより養ってしまう。不幸な女性を幸せにすることに喜びを感じる、という異常な恋愛を繰り返してしまう。

 正常な恋愛を楽しんでいる人には理解できないことばかりだろうが、彼らには共通した5つのポイントがある。

1.「必要とされる」ことを必要とする
2.「救済者」になりたがる
3. 相手を放っておけない
4. 常に自分を後回しにする
5. 現実を見つめることができない

「自分が相手を好き」よりも「相手が自分を好き」に重きを置いている共依存者は、「君だけなんだ」をはじめとする「必要とされる」言葉にとても弱い。他人の世話を焼いているときに充実感を覚えたり、他人の問題に深入りしてしまったり、相手のささいな言動に一喜一憂したり、人との距離感も少々いびつだ。そして恋人に殴られたりお金をせびられたりしても、「私がいないとあの人はどうなるんだろう?」という思考でがんじがらめになって、結局別れられない「認知機能の破たん」も挙げられる。

 常軌を逸するこの行動の根底には、幼少期に経験した、親をはじめとする家庭環境の問題や過去のトラウマが隠されていることが多い。

 一般的な家庭では、子どもは親から「正しく愛される経験」を経て人格を形成していく。しかし共依存者の多くは、親から愛されなかったり、一見愛されているようで実は「支配的な教育」(=過保護も入る)を受けていたり、親子関係が破たんしている。この「失われた愛情」は、大人へと成長してしまうと取り戻すことができない。その結果、なんとか愛情を取り戻そうとする動きを始める。それが上記の5つのポイントだ。彼らは愛を渇望しているため、無意識に取り戻そうとしていたのだ。

 そしてその行動は恋人にも表れる。「恋人=象徴的親」となり、愛情をもらおうと「しがみつく」。そうしないと、幼少期のトラウマ「失われた愛情」を再び経験してしまうからだ。だから共依存者はひどい恋人から別れられない。

■共依存者と恋人になりやすい回避依存者

 共依存者が強く引きつけられるタイプがいる。回避依存者だ。彼らにも4つのタイプがある。

1. 独裁者――常に相手を支配したがる
2. 搾取者――罪悪感に訴えて相手を利用する
3. ナルシスト――自分の理想を押しつける
4. 脱走者――愛が深まるほどに別れたくなる

 1つ目は、典型的なDV男、もしくは恋人を常に否定しながら行動を監視するタイプだ。2つ目は、金やものを頼んでくるときだけ優しくなり、それを拒否したときの怒りのギャップが驚くほど大きいクズなタイプ。3つ目は、典型的なナルシストだ。自己愛性人格障害の可能性が高い。4つ目が、束縛を過剰に嫌がり、恋人にさえ心を開けないタイプだ。

 どのタイプも恋人というより、人間として問題を抱えている。実は彼らも共依存者たちと同様に、親との関係に失敗した人々だ。いびつな恋愛をしてしまう人々の大半は「親からひどい教育を受けた被害者」といえるかもしれない。

 しかしなぜこんな典型的クズが、共依存者を引き寄せてしまうのだろう。これはお互いの親の存在が大きいようだ。

 共依存者の女性の父親に多いのが、「冷たくて厳しい父」や「まったくかまってくれない父」だ。これはそのまま回避依存者の男性に当てはまる。一方、回避依存者の男性の母親に多いのが、「何でも自分の言うことを聞いてくれる母」「男性に虐げられる哀れな母」「悩み苦しんでいて助けを求めている母」だ。こちらも共依存者の女性の特徴そのままだ。

 つまり、お互いが子どもの頃に見慣れた光景、もしくは過去から積み上げられてきた記憶が投影された姿だから、出会った瞬間にビビッとくるものがあるのだろう。「今度の恋はうまくいきそうな気がする!」。毎回そう口にするのは、こういった恐ろしいワケがあるのだ。

 そして再び苦しい恋のループにはまっていく。なにより彼らの多くが、自分が毎回苦しい恋愛を繰り返してしまう理由をよくわかってない。不幸であるのに、その原因にも気づけず、対処もできない。これほど不毛な恋愛はない。

■この苦しみから抜け出す10のステップ

 ここまで本書より、共依存者と回避依存者の典型的な特徴を紹介した。しかしここまでの内容すら、本書では一部にすぎない。さらにこの後には、ロマンス依存者とセックス依存者の解説もある。300ページに及ぶ「恋愛依存」の世界を読み終えたとき、頭がクラクラしてしばらく動けなかった。

 なんという、辛く悲しい世界を生きているんだろう。言葉にできない同情が心の片隅に残る。そしてそんな子どもを育てた親に罪がないのかというと、本書から察するに、その親も「失われた愛情」の経験があるのかもしれない。その親さえ被害者の可能性が高いのだ。

 つまり「恋愛依存」は世代を超えて「負の連鎖」を繰り返していくのではないか。私たちが子どもを授かったとき、愛情の注ぎ方次第では、その子どもから始まる恐ろしい連鎖を生みだしてしまうかもしれない。親とは偉大な存在であり、一歩間違えば悪魔にもなりうる。本書が描く真実は、決して風化させてはならない。

 最後に本書で紹介されている、彼らがこの苦しみから抜け出す10のステップを紹介しよう。本書ではこのステップのひとつひとつに詳しい解説が加えられているので、気になった方、今も苦しい恋愛を続けている知人がいる方は、ぜひ手に取って参考にしてほしい。

1. 心の悲鳴に気づく
2. 他からの助けが必要
3. 悪い行動パターンを自覚する
4. 抑圧された欲求を知る
5. 自分を愛する
6. 過去と向き合う
7. 過去の心のほころびを作り直す
8. 執着をやめる
9. 後戻りする誘惑に負けない
10. 自分の力を信じる

文=いのうえゆきひろ