国宝のスゴさ&見どころはこれで分かる! 国宝の解剖図鑑

文芸・カルチャー

2018/6/23

『国宝の解剖図鑑』(佐藤晃子/エクスナレッジ)

 旅行先などで国宝の美術品を観た時に、「あれ、こんなものか」とがっかりしたことはないだろうか? 私は…結構ある(笑)。だが、「国宝」の「よさ」を理解できないことに、なんとなく人生損しているような気分になっていた。そんな時に書店で見かけた『国宝の解剖図鑑』(佐藤晃子/エクスナレッジ)。本書は「国宝」がなぜ「スゴイ」のか。その「国宝」の「国宝」たる所以を、初心者にも分かりやすく図解している1冊だ。

「国宝」とは、「重要文化財のうち、世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない民の宝たるもの」。そもそも重要文化財であることが前提であり、その中から特に文化的・歴史的に意義が高いと判断され、「国の宝として、とっても重要なものだから保護していこう!」という意味も込められて認定される。

 現在、国宝として指定されている文化財の数は1110件。結構多いような気もするが、重要文化財が1万3000件以上あるので、国宝はその中の1割以下。かなり選抜されているのである。

 そういった国宝の中から本書は作品をピックアップし、そのスゴさを図解で徹底解剖している。中でも、私が今すぐ観に行きたくなった個人的イチオシをご紹介しよう!

■「彦根屏風」――人物の配置は計算されたものだった!

 

 江戸時代の寛永年間に制作されたとされる「彦根屏風」。名前だけ聞いても覚えがない方も多いかもしれないが、教科書などで一度は目にしているのではないだろうか。

 江戸時代の京都の遊里を舞台に、遊ぶ客と遊女たちの姿を、洗練された筆致で描いた作品。人物の服装などが特徴的で、私は以前からよく図録などで眺めていたのだが、こういった人々の風俗を描いた屏風は他にもたくさんあるし、なぜこの作品が「国宝」になったのかは、よく分かっていなかった。

▲本書72~73ページ「紙本金地著色風俗図(彦根屏風)」(江戸時代初期、彦根市所蔵)

 この屏風のスゴさは、細密な描写と伝統的、教養的なテーマが各所に組み込まれた奥深さだという。同じ種類の作品と比較して、抜きんでたクオリティらしい。

 さらに「計算された画面構成」が高く評価されている。15人すべての人物が似た形を繰り返しながら描かれており、画面全体が秩序よくまとまっているのだとか。「なんとなくバランスいいよね」くらいにしか思っていなかったが、受け手がそう感じるのは、描き手の卓越した技術とセンスがあったからだったのだ…。スゴイ。

 

■「平等院鳳凰堂」――極楽浄土をこの世に再現! 平安貴族が夢見た光景

▲本書114~115ページ「平等院鳳凰堂」(平安時代後期)

 有名な観光名所であり、古都京都の文化財として世界遺産にも登録されている「平等院鳳凰堂」は平安時代に創建された建物だ。「国宝」に認定された理由は「極楽浄土をイメージするため、この世で完全再現した建築」だったから。平安貴族たちが「きっと極楽浄土ってこんな風景だよね」と憧れ、その光景を実際に建築として再現し、それがなお現存しているのがまずスゴイ。さらに「彼らはこんな風景を極楽浄土だと思ったのか」と、現代人が当時の人々に想いを馳せられるのも魅力ではないだろうか。

 繰り返しになるが、国宝は「国の宝」である。認定されただけの、しかるべき理由があるのだ。その「スゴさ」を知らずにいるのは、やっぱりちょっと、もったいない気がする。

文=雨野裾