渋い…渋すぎるぞ! 『孤独のグルメ』の原作者が弟と共に送る究極の昭和の匂い

アニメ・マンガ

2018/6/21

『古本屋台』(Q.B.B.〈久住昌之:作、久住卓也:画〉/集英社)

 テクノロジーの進化が止まらない。品質向上、時間短縮、効率重視…それらをひたすら目指して、今の私たちはパソコンやスマートフォン、AIなどをいともたやすく日常生活で用いるようになった。一方でそんな進化のレールから外れたアナログ回帰の動きもある。音楽の世界でいえば、CDからブルーレイへと移りつつある中、あえてターンテーブルで、レコードに針を落とす瞬間を楽しんでいる人もいるようだ。

『古本屋台』(Q.B.B.〈久住昌之:作、久住卓也:画〉/集英社)は、『孤独のグルメ』の原作者である久住昌之氏が実弟の卓也氏と組んだユニットQ.B.B.が送る激シブ漫画だ。その世界には“テクノロジー”のかけらもない。どこかに残っていてほしいと願わずにはいられない、昭和の時代のアナログ感が漂っている。

■「古本屋台」とはなんぞや?

“古本”と書かれたちょうちんをぶら下げ、夜中になるとどこからともなくあらわれる「古本屋台」。屋台好き、古本好き、酒好きは各々存在しているだろうが、この3つが一体となった「古本屋台」には珍本奇本が集まっており、“ある意味”奇人変人が集まってくる。春夏秋冬、いつも伏し目がちで不愛想な店主のオヤジは、実は客の様子をしっかりと見ている。正体不明で経歴不明、なぜかバイオリンを奏でることができるこの謎のオヤジが選ぶ本とあらば、マニアならずとも興味を惹かれる。出される酒は1杯100円のコップ酒。

「飲むの?ひとり1杯だけね。ウチは飲み屋じゃないんだから」

それがオヤジの定番セリフ。

■古本好きの好物がギッシリ!?

「古本屋台」はいつも“思い出”をギッシリ積んでいる。子供の頃大好きだった本、何十年も前に衝撃を巻き起こした本、初めて触れた外国の文学、若いころ見栄で本棚に並べた本…ジャンルは問わない。ネットで探せばもっと簡単にたどり着くことができるのかもしれないが、びっしり詰まった本棚の中から「これは!」と思える1冊を見つけるのは、宝探しのようで胸が躍る。

 本書に登場する古本たちを一部紹介しよう。

『風のくわるてっと』(松本 隆/ブロンズ社、1972年)
『いやいやえん』(中川李枝子:著、大村百合子:絵/福音館書店、1962年)
『つげ義春作品集』(つげ義春/青林堂、1975年)
『澁澤龍彦全集』全22巻・別巻2(河出書房新社、1995年)
『背中の志ん生 落語家圓菊 師匠と歩いた二十年』(古今亭圓菊/うなぎ書房、2001年)
『ライ麦畑でつかまえて』(J.D.サリンジャー:著、野崎 孝:訳/白水社、1979年)

 能率主義や時間節約は大事なことだが、人生には一見無駄と思われる時間も必要ではないか。古本の手触り、古本の匂い、ちょっとした書き込みや挟まったままの黄ばんだしおりにも、小さなドラマが存在する。

『古本屋台』この漫画を読んだらきっと、次の週末は古書店巡りをしたくなる、そんな1冊だ。

文=銀 璃子