ふわふわオムレツを焼くコツって? 身近な料理を美味しくする一工夫を学べるクッキング小説【オムレツ編】

文芸・カルチャー

2018/6/26

『星ヶ丘高校料理部 偏差値68の目玉焼き』(樋口直哉/講談社)

 料理は観察。火にかけた食材の色の変化を見、音を聞き、絶妙のタイミングで次の工程をこなしていくのが、美味しい料理を作るコツだ。料理経験を積めば積むほど人はそんな観察眼が磨かれていくのではないか。その観察眼がときに日常の謎を解き明かすこともあるかもしれない。

 樋口直哉氏著『星ヶ丘高校料理部 偏差値68の目玉焼き』(講談社)は、読むだけで料理が上手になるメソッドが学べるお料理ミステリ小説。作者の樋口直哉氏はフレンチの料理人としても知られる人物。本作では、高校生たちの日常をいきいきと感じながら、気軽に、身近な料理をとびきり美味しくする方法を学ぶことができる。目玉焼き、オムレツ、ハンバーグ、カレーライス…。この本を読むと、思わず、部員たちを真似て、普段の料理に一工夫加えてみたくなることだろう。

 舞台は、部員不足で廃部寸前の私立星ヶ丘高校 料理部。ある日、篠原皐月は、料理部顧問の理科教師・沢木先生に憧れているという友人の藤野和音に誘われ、この部に入部することになる。いつも眠たげな謎多きイケメン部長・内海のプロ顔負けのたくみな料理のテクニック。理科教師ならではの、沢木先生のお料理ウンチク。今までほとんど料理をせず、決して料理が上手いとはいえない篠原と藤野だが、次第に、料理をすることの楽しさにハマっていく。さらに不慣れな料理と格闘しているうちに身の回りの事件まで美味しく解決していて…。

 ある日、篠原と藤野は内海部長から「スフレ・オムレツ」の作り方を教わる。だが、料理素人の2人にはふわふわのオムレツを作るカギとなるメレンゲが上手く作れない。内海部長によれば、「メレンゲ作りが苦手なら、卵白の状態を安定される『クレーム・オブ・タータ』を使うと良い」らしい。そこで、沢木先生の引率で部員たちは「クレーム・オブ・タータ」の産地であるブドウ農園を営む野々村を尋ねる。なんでもそのブドウ園では、第二次大戦最中、ワインの醸造所から一夜にしてワインが消える事件が起きたのだとか…。料理をしているうちに、とある可能性に気づく内海部長。部員たちは美味しいオムレツを作れるのか。そして、野々村のブドウ農園の謎を解き明かすことはできるのか。

 内海部長は不思議な人物だ。どうしてこんなにも料理が上手なのだろう。この本を読んでいると、部員たちとともに、自然と美味しい料理を作るコツを学べる。たとえば、ふわふわのオムレツを作るのはなかなか難しいが、内海部長に教われば、オムレツ作りのポイントがつかめてくる。

「メレンゲ作りでは、泡立て器は親指と人差し指と中指で持つ。がっしり握ってしまうと、手首が利かなくなるからな。円じゃなくて、縦に動かす。そうすると剪断力が働いて早く泡立つんだ」
「焼く工程は、目玉焼きと同じだから大丈夫」

 表面はサクッとしていながらも、中身はふわふわ。そんな美味しいオムレツを、この本を読めばあなたも作ることができるかもしれない。

 さらに、内海部長の推理ショーも見もの。すぐれた観察眼によって、野々村が長年疑問に思ってきた事件の謎を解き明かす。美味しい料理の作り方を学べるだけでなく、推理ショーも楽しめるこの作品で、あなたも「美味しい謎解き」を体験してみてはどうだろうか。


文=アサトーミナミ