絶品ハンバーグを作るコツって? 身近な料理を美味しくする一工夫を学べるクッキング小説【ハンバーグ編】

文芸・カルチャー

2018/6/28

『星ヶ丘高校料理部 偏差値68の目玉焼き』(樋口直哉/講談社)

 この世で一番美味しい料理は、お母さんの作る料理かもしれない。レストランで食べる料理よりも舌が求めるのは家庭の味。プロのような料理が作れるのも素晴らしいことだが、学ぶべきは慣れ親しんだ味に違いない。

 樋口直哉氏著『星ヶ丘高校料理部 偏差値68の目玉焼き』(講談社)は、読むだけで料理が上手になるメソッドが学べるお料理ミステリ小説。作者の樋口直哉氏はフレンチの料理人としても知られる人物。本作では、高校生たちの日常をいきいきと感じながら、気軽に、身近な料理をとびきり美味しくする方法を学ぶことができる。目玉焼き、オムレツ、ハンバーグ、カレーライス…。この本を読むと、思わず、部員たちを真似て、普段の料理に一工夫加えてみたくなることだろう。

 舞台は、部員不足で廃部寸前の私立星ヶ丘高校料理部。ある日、篠原皐月は、料理部顧問の理科教師・沢木先生に憧れているという友人の藤野和音に誘われ、この部に入部することになる。いつも眠たげな謎多きイケメン部長・内海のプロ顔負けのたくみな料理のテクニック。理科教師ならではの、沢木先生のお料理ウンチク。今までほとんど料理をせず、決して料理が上手いとはいえない篠原と藤野だが、次第に、料理をすることの楽しさにハマっていく。さらに不慣れな料理と格闘しているうちに身の回りの事件まで美味しく解決していて…。

 ある日、篠原と藤野は隣のクラスの三上亜紀にハンバーグの作り方を教えてほしいと頼まれる。なんでも入院している母親に代わって弟の誕生日にハンバーグを作ってあげたいのだそうだ。かつて、弟の誕生日に鎌倉の和食屋さんで食べたハンバーグが絶品だったという。そこで篠原と藤野は、内海部長に作り方を聞くことにする。

 ハンバーグは、焼く系の肉料理ではいちばん難しい。「焼く」という料理の基本だけでなく、「蒸す」という工程も同時に行わなくてはならないからだ。そんな難易度の高い料理を上手く作る方法を内海部長はいとも簡単に教える。

「炒めた玉ねぎをきちんと冷やしておくことが大事だな」
「ここで油を切るのがポイントだな。油があるとフライパンの温度が上がり過ぎるので、ここで一度ブレーキを踏んで、スピードを落としておくんだ。そうすれば焦げにくいし、肉の温度も上がり過ぎない」

 部員たちとともに、思わず、内海部長の料理に魅せられる。自分もこんな風に料理ができるようになれたら…。この本を読んでいると、なんだか、自分も料理にチャレンジしてみたくなる。

 だが、本格的な料理を教える内海部長に対し、沢木先生は、「三上の作りたいのは、プロの味ではなく、母親の味なのではないか」というのだ。お店の味のようなハンバーグを作るべきか、それとも家庭の味のハンバーグを作るべきか。本格ハンバーグの作り方を学びつつも、部員たちは、それぞれ、家庭の味に思いを馳せる。

 料理は愛情。家庭の数だけ、愛情深い絶品の味がある。この本で料理の基本を学びつつ、美味しい家庭料理を作る秘訣を家族に聞いてみてはどうだろう。そこには意外な隠し味が使われていることも…。料理をすること、食べることが学べるこの小説は、普段料理をする人にもしない人にも読んでほしいあたたかい作品だ。


文=アサトーミナミ