大谷翔平ロスにオススメ! 雄弁すぎる言葉で解き明かされる、5年間の奇跡の軌跡

スポーツ

2018/6/27

『大谷翔平 野球翔年 I 日本編2013-2018』(石田雄太/文藝春秋)

 今、野球を知らない人も見たくなる。そんなスーパースター選手がいる。言うまでもなく、大谷翔平のことだ。投げては時速160キロ超え、打っては特大ホームランを連発。それに、走力もメジャートップレベルということが最近の報道で明らかになった。

 速い球を投げること、打球を遠くに飛ばすこと、速く走ることは、天性の能力によるところが大きいと言われる。そのすべてを大谷は備えているのだ。日本でセンセーションを巻き起こした逸材の中の逸材は、メジャーに移籍しても桁外れのポテンシャルを開幕から発揮。アメリカでも常識を覆す“二刀流”として進化を続けている。

 まさに進化といっていい。その軌跡が『大谷翔平 野球翔年 I 日本編2013-2018』(石田雄太/文藝春秋)を読むと、よく分かる。大谷がどんな選手でどう成長してきたのか。同書は、長年にわたり日米で野球の取材をしてきた著者の石田雄太さんが、ていねいかつつぶさに大谷のマイルストーンを記した一冊だ。日本ハムファイターズ時代からエンジェルスに移籍するまでの期間、打者として、投手として、いかにレベルアップを遂げたかが本人の言葉とともに明らかにされている。

 同書はまた、今の大谷を作り上げたと言っても過言ではない、日本ハムファイターズの栗山監督と大谷の物語としても読むことができる。タイトルが表すように、大谷は規格外だが野球少年そのもの。求める頂は野球において全知全能の「野球の神様」だ。そのため、飽くなき探究心と無限の努力を惜しまない。若くて力みなぎる負けず嫌いの大谷の手綱を、いかに栗山監督が取ったかの軌跡も見てとれる。

 そうした本編もサイドストーリーも目撃してきた石田さんは、時に大谷に深い質問を浴びせる。すると、大谷は変わらず誠実に自らの言葉を紡ぎ出す。球界の至宝とも呼ばれる逸材が、ここまで考えて、これほどまでに野球に取り組んでいたこと、だからこそ世界をも驚かせることができたこと、すべての点と点が線になる。

■大谷が語る、投手としての「音合わせ」

 大谷は、フィギュアスケートの金メダリスト・羽生結弦と同じ1994年生まれ、いわゆる“羽生結弦世代”だ。羽生があまりに雄弁に語るからだろう。大谷は、自らの雄弁さに自信を持っていないようだが、彼も驚くほど雄弁に独自の世界観を語ることができる。

 その一つが「音合わせ」というフレーズだ。より少ないエネルギーで強い球を投げられるよう、大谷はプロ入り後のオフに身体を大きくしている。そうしてビルドアップした身体で、新たに実戦へと準備を整えていくこと、投球フォームを固めていくことを、大谷は「音合わせ」と表現しているのだそうだ。

 2年目のキャンプインでは、フォームがバラバラで指揮官がカンカンに怒ったことも。だが、これについても「大きくなった身体にフォームがまだついていっていなかっただけ。1か月もあれば完成する」と動じることなく、手応えと見通しを語っている。続けたその表現がまた面白い。

「運転技術の未熟な人が、高性能のスポーツカーを運転してうまく操作できるのかって言われたら、すぐには難しいと思うんです。それと同じことで、技術の向上とは別に体力が上がっていくのは悪いことではないし、体力が上がるに越したことはない。使う身体がしっかりしてくれば、違うフォームが必要になります。その作業をやり始めたところだったので、僕の中に焦りはまったくありませんでした。」

 少しでも不調を来せば、関係者、メディア、ファンに至るまで大騒ぎとなるスターだ。そんな時も、大谷がどれほど周りに惑わされることなく、時にしっかりと主張し、時に謙虚にアドバイスに耳を傾け、自分らしく成長してきたかが分かる。肘の怪我で離脱中の今、日米がざわついているが、本人は地に足を着けて復帰の道筋を辿っているのだろう。今、大谷の話題が少なくて「ロス」な人は、その軌跡を同書でひもといてみることをオススメしたい。

文=松山ようこ

二刀流・大谷翔平の活躍はファイターズという組織があってこそ―『大谷翔平 二刀流』著者インタビュー