「文房具の10年」のトップに君臨するのは? 文房具ナンバーワン決定会議!

暮らし

2018/7/15

『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(ブング・ジャム、古川耕/スモール出版)

 あまりにも身近すぎて気がつきにくいが、文房具は常に時代とともに進化してきた。そもそも、「鉛筆」の時点で、若い世代では使っている人がもうほとんどいない。大半は「シャーペン」を使うようになっているし、その中でもさまざまな種類に分かれているのが現状だ。手帳、ノート、はさみ、消しゴム…。わずかな間にまったく形を変えてしまった文房具を挙げていくときりがない。

 では、あえて近年の文房具の中で「ナンバーワン」を決めるとしたら? そんな無謀な会議を行ってしまった様子を収録したのが『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)である。出席者は、文房具トーク・ユニット「ブング・ジャム」の3人と、ライターの古川耕氏。文房具にとって特別だった10年を振り返りながら、どんな文房具が「ナンバーワン」に輝くのか、会議のゆくえを楽しんでほしい。

 本会議は2017年6月11日、新宿「芸能花伝舎」で開催され、チケットがソールドアウトするほどの人気を見せた。コアな文房具ファンを前にしての会議は、本書巻頭にも収録された「文房具年表(2003~2017年)」を下敷きにして進行していく。ここで名前の挙がった文房具は「代表的なもの」だけだというが、それにしても、こんなにも多くの画期的な商品が文房具界をにぎわしていたとは、驚きだ。

 ちなみに、「文房具の時代」の皮切りとなったのは2003年に登場した「カドケシ」。28個の立方体からできた消しゴムで、「ずっと角で文字を消したい」という消費者の願望をかなえてくれるヒット商品となった。カドケシにあった「その手があったか感」は以後、「既存の商品にちょっとだけ機能やデザインを加えていく」新商品の流れを生み出していく。

 出席者の会話からは、次々に便利でユニークな文房具が登場した時代を思い返し、興奮が蘇ってきたのが伝わってくる。低粘度性インクを使用したボールペン「ジェットストリーム」(2006年)、消せるボールペンとして話題を集めた「フリクションボール」(2007年)、東大合格生のノートを解析して作られた「キャンパスノート ドット入り罫線」(2008年)……いずれも現在まで売れ続けている人気商品ばかりだ。また、なかなかリピーター獲得につながらなかったカドケシとは違い、これらの商品は過去商品と実用性に明らかな差があったため、一般層への浸透力も深かったのだという。

 やがて、2011年にテレビ朝日『SmaSTATION!!』で文房具特集が放送されると、空前の文房具ブームが巻き起こり、各メディアが一斉に文房具を紹介し始める。文房具を取り上げるYouTuberも増えてきた。出席者も「YouTuberやYouTubeを観ている人たちに支えられた」文具に目を向けている。2014年発売の「オレンズ」「デルガード」といったシャーペン人気は、YouTubeを夢中で楽しんでいた中高生からの支持だったのだろう。そのほか、スマホの普及が文房具に与えた影響など、時代性を絡めたヒット商品の考察はとても興味深い。

 それにしても、出席者の文房具愛に圧倒される本である。たとえば、フリクションボールのインクの質が高いと証明するため、文具王こと高畑正幸氏はとんでもないことを言い始める。

文具王 あと電子顕微鏡で見ると、中に……。(中略)中に入っている粒粒の大きさが均質でより小さくなったというのがあって。要はインクとしての性能が上がっている。

「そこまでするか」という偏愛に満ちた分析のもと、日本を代表するマニアたちはどの文房具を「ナンバーワン」に選んだのか? 数々のうんちくとともに、会議を楽しんでほしい。

文=石塚就一