「AV女優」を辞めた後の人生とは? みひろ、麻美ゆま、長谷川瞳、泉麻那らが語る―

エンタメ

2018/7/28

『AV女優、のち』(安田理央/KADOKAWA)

 いまや、AV産業はごく日常的なものとして日本人の生活に浸透している。業界の主役であるAV女優も地上波のテレビ番組に出演し、同性からの支持すら得るまでになった。ただ、そんな彼女たちの女優生命はあまりにも短い。吉沢明歩や明日花キララのように、10年以上も業界で活躍できる女優はほんの一握りだ。現在、6000人いるといわれているAV女優の大半は、契約本数を終えるとひっそり業界から去り、別の人生を歩むことになる。

 AV女優にとって、現役時代よりも「その後」の人生の方がはるかに長い。引退した元AV女優たちは何を思い、どんな道を選ぶのだろう? アダルトメディア研究家として活躍する安田理央氏が、かつての人気AV女優たちにインタビューした『AV女優、のち』(KADOKAWA)には、過去から目を背けずに未来を見据える女性の姿があった。

 大きく分けると、元AV女優のセカンドキャリアには「性産業に残るケース」と「残らないケース」がある。みひろや麻美ゆまは女優時代の人気をステップにして、今でもメディアで活躍している。特に、「志村けんファミリー」の一員でもあったみひろは、AV史でもトップクラスの出世頭だといえるだろう。

 一方、長谷川瞳のように風俗店へと活動の拠点を移す元AV女優も少なくない。AV経験者の女性を集めた風俗店も店舗数を増やしており、元女優の受け皿として機能しているのだ。さらに、特異な例は真咲南朋(元・安藤なつ妃)である。女優引退後、真咲は自分が撮る側にまわり、今では現役女優が「撮ってもらいたい監督」の筆頭株にまで成長した。ギャル系女優のトップだった泉麻那も、ヘアメイクとして撮影現場に関わり続けている。

 2000年代以降を代表する元人気女優たちのインタビューからは、AV産業の移り変わりも見てとれる。企画単体系女優として絶大な支持を得て、「キカタン四天王」の1人に数えられた笠木忍は、引退後、再びAV界に舞い戻ってきた。2011年のことである。しかし、笠木は絶頂期ほどのセールスを挙げられず、1年ほどでフェイドアウトしてしまう。不器用であどけない魅力が売りだった笠木は、器用にあらゆるジャンルをこなすよう求められる現代のAV業界にハマらなかったのだ。短いトレンドの周期に翻弄され、消費されていくAV女優の儚さを、笠木のキャリアは体現している。

 そして、女優になったからには避けて通れない問題が、「家族や恋人への告白」と「世間からのバッシング」だ。特に、みひろや麻美ゆまのように、芸能界に残った元女優は過去を隠し通すことなどできない。その結果、ふとした拍子に心ない声を浴びせられる場面も出てくる。みひろは結婚発表、麻美はがん治療の告白というタイミングで、理不尽なバッシングを経験した。「子供がかわいそう」「天罰」などといった意見からは、いくら認知度が高まったとはいえ、世間からAV女優へ向けられた差別意識は消えたのではないと思い知らされる。

 それでも、本書に登場する7人の元女優たちは、自分の過去を否定も後悔もしていない。もちろん、そうでない元女優や現役女優はたくさんいるだろうし、AV業界に出演強要などの闇があったのも事実である。しかし、彼女たちが今立っているのは、AV経験によって導かれた場所なのも、紛れもない事実なのだ。麻美ゆまは自斜伝やシングル曲に『Re Start』とつけた理由をこう語る。

わたしがこうやって歌手になれたのは、AV女優・麻美ゆまを応援してくださったファンの方々があってこそだと思っています。だからリセットにしたくなくて、自分の過去も含めた新しい一歩として『Re Start』という言葉を大事にして、頑張っていきます。

 過去にどんな意味があったのかは未来によって決まる。本書で語られた七者七様の「Re Start」には、困難に立ち向かいながらも幸せをつかもうとする女性の強さがのぞいている。

文=石塚就一