宇宙は有限?無限? 外側にはなにがある? 最新の観測から見えてきた宇宙の姿

暮らし

2018/7/26

『宇宙の「果て」になにがあるのか 最新天文学が描く、時間と空間の終わり(ブルーバックス)』(戸谷友則/講談社)

 宇宙は138億年前にビッグバンによって誕生し、今も膨張を続けている。その半径は我々を中心にして466億光年。光の速さで移動しても、それだけの時間がかかるという途方もない大きさだ。

 面白いのはそれだけ巨大な宇宙にも、「果て」があるということだろう。その先にはどんな世界が広がっているのか? 普段意識することは滅多にないが、一度考え出すと気になって眠れなくなる疑問だ。

『宇宙の「果て」になにがあるのか 最新天文学が描く、時間と空間の終わり(ブルーバックス)』(戸谷友則/講談社)は、そうした人類共通の謎について、宇宙物理学者・天文学者の著者が分かりやすく解説を加えた「宇宙の果て」入門である。私は宇宙論や天文学についてまったくの素人だが、平易な文章に助けられ、スムーズに読み通すことができた。

 本書はまず、現代宇宙論の基礎となっている相対性理論と、そこから導き出されたビッグバンについて説明する。アインシュタインが1915年に一般相対性理論を発表。この画期的な理論をもとにフリードマンが膨張宇宙の方程式とその解を導き、ほどなく天文学者ハッブルがその動かぬ証拠を報告。こうして宇宙は過去のある時点で始まった、とするビッグバン宇宙論が発展してくる。

 20世紀前半に相次いだ科学史上の大発見。本書はその意義を明らかにしながら、人類が宇宙の謎に迫ってゆく姿を描き出す。日常の感覚からするとにわかには信じられないビッグバン宇宙論だが、その背後には科学者たちの懸命の試行錯誤と、揺るぎない理論が存在した。

 後半では、天文学的に観測可能な宇宙の果てと、未来方向の宇宙の果てという、2つの宇宙の果てについて語られる。最先端の宇宙観測の成果を交えながら、より具体的に宇宙の実像に迫ってゆくくだりは、天文学者である著者の独壇場。ニュートリノ、重力波という旬のトピックも詳しく取りあげられている。宇宙論というテーマ上、数式もいくつか登場するが、専門的な記述は極力抑えられているので文系読者でも安心だ。

 なお、著者の戸谷友則氏はマンガ・アニメファンでもあるらしく、冷静かつ論理的な文章に交じって、『ガンダム』『ヤマト』などの小ネタが挿入されている。ユーモラスな筆致が、本書をより親しみやすい入門書にしている。

 今日まで宇宙の姿はかなりの部分が明らかになってきた。しかし著者によれば分からないこともたくさんあるという。たとえば「暗黒物質」「暗黒エネルギー」の正体は、現代宇宙論における最大の未解決問題だ。

 が、本書を読んでいるといつの日かその難問も解き明かされるだろう、と思えてくる。アインシュタインが予見した「重力波」が、ちょうど100年後になって検出されたように、科学のバトンは過去から現代、未来へと託され、来るべき大発見へとつながってゆく。本書はそんな人類の知恵の積み重ねを実感できるという意味でも、読み応えのある一冊である。宇宙の果てに何があるかは分からない。でも、分からないとはっきり言えるのは、実はすごいことなのだ。

 天体観測にぴったりのこの季節、宇宙の果てに思いをはせてみてはいかがだろうか?

文=朝宮運河