夕方の神社には“アレ”が出るのでお参りはご法度。宮司が聞いた神社にまつわる怖い話

文芸・カルチャー

更新日:2020/5/8

『神恐ろしや』(三浦利規/PHP研究所)

 夏の風物詩のひとつといえば、身の毛もよだつほどの怖い話や怪談。本当かどうかという真相はさておき、およそこの世の者とは思えない幽霊の話であったり、いわくつきの場所で巻き起こる現実離れしたエピソードの数々は、時に、いや、しばしば鳥肌が立つほどの薄ら寒さをもたらしてくれるものだ。

 怖い話や怪談といったものは、語り手がどのような人物であるかによっても説得力が大きく変わってくるところだが、どことなく畏怖される場所・神社の宮司が著した『神恐ろしや』(PHP研究所)は、さまざまな怪談本があるなかでも異質な1冊だ。秋田県・伊豆山神社の宮司である三浦利規さんが、神職を通して知り得てきたという数々のエピソードは、どれも独特な不気味さをかもし出している。

 そんな本書の中から、東京都台東区にある“鳥越神社”を舞台に、ひとりの女性が謎の死を遂げたエピソードを紹介してみたい。

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◎夕方神社に行ってはだめ――その理由は

 服部美樹さん(仮名・26歳)は劇団メンバーであるかたわら、浅草のスナックでバイトをしていた。昼間は芝居の稽古、土日以外の夜にバイトをしていた美樹さんには、スナックへ向かう夕方5時頃に鳥越神社でお参りをするという日課があった。

 そんなある夜、美樹さんの働くスナックに、沖縄の民間霊能者・ユタの血を引くと思われる女性の占い師が現れた。スナックのママの友達だという占い師はその夜、女性客と2人でカウンターに座っていた。

 ビールを出した美樹さんと「店に来る前、鳥越神社にお参りしてるんだって?」と、気さくな会話を続けていた占い師。しかし、美樹さんが「昼間劇団の稽古がない日は、必ず5時ぐらいにお参りしてから店に来るんですよ」と返したとたん、途端に怖い顔つきになった占い師は「夕方神社に行ってはだめ。夕方はやめなさい!」ときつい口調で答えた…。