夕方の神社には“アレ”が出るのでお参りはご法度。宮司が聞いた神社にまつわる怖い話

文芸・カルチャー

更新日:2020/5/8

◎“見える人”を不幸にするという魔物の正体

 後日、改めて美樹さんはその理由を尋ねた。占い師によれば「日暮れ時は神社に魔物が現れる」のだという。神社に祀られた龍神さまや神さまが目を光らせている昼間は、魔物が寄ってこない。しかし、龍神さまや神さまが自分のお社に帰る頃、つまり夕方に、その隙を狙った魔物たちが、神社に満ちている“ご神気”を取り込んで魔力を上げようと寄ってくるのだという。

 そして、占い師は「人には“見える人”と、“見えない人”がいる」と続けた。何でも、魔物は「見た者にとり憑いて、容赦なくその人を不幸にしてしまう」というのだ。夕方にお参りをしていても、何も起きないという人は魔物がたまたま見えていないだけに過ぎず、美樹さんを案ずる占い師は「とにかく夕方神社にお参りしてはいけない、これは昔から言われてきたことだから、守ったほうがいいわよ」と忠告した。

 その夜、占い師の言葉を受けた美樹さんは、酒の酔いもすっかり覚めて、青ざめてしまったのだという。

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◎黒い“何か”を見てしまった女性は――

 やがて新年を迎えたある日、美樹さんは同僚のホステスに「見たの、私…」と打ち明けた。「え、何を見たの?」と返す同僚。すると美樹さんは「鳥越神社で魔物を見たの…」と続けた。

 占い師に忠告されてからも、実は美樹さんは日課として夕方のお参りを続けていた。しかしある日、境内から鳥居へ向かうまでの間に黒い“何か”がサッと、自分の脇をすり抜けるのを見たのだという。不安を打ち明けた美樹さんであったが、その身を案じた同僚やスナックのママのはからいで、それから2日後の昼間に占い師によってお祓いが行われることになった。

 しかし、同僚に“魔物”を見たかもしれないと打ち明けたその日の夜、美樹さんは亡くなった。

 彼女が住んでいたマンションの住人の目撃証言によれば、最上階である7階のベランダから飛び降りたのだという。彼女の手には鳥越神社のお守りが固く握られていたのだそうだ――。

 果たして彼女が見たという“魔物”は本当にいたのだろうか。飛び降りる間際、住人によれば美樹さんは何度か室内を振り返っていたのだという。美樹さんが亡くなった今、死の真相を探ることはできないが、いずれにせよ、心のどこかにどんよりとした気持ちを残すエピソードである。信心深い皆さんも、日暮れ時の神社参りには気をつけたほうがいいかもしれない…。

文=カネコシュウヘイ