30代40代元りぼんっ子必見! 大人になって知る『りぼん』ふろくの制作秘話がおもしろい!

アニメ・マンガ

2018/8/22

『りぼんのふろく「カワイイ」のひみつ(集英社ムック)』(集英社)

 実家の自室を片付けていると、机の引き出しの奥の奥からピンク色の手帳が出てきた。表紙にはカワイらしくポーズをきめるポニーテールの女の子と白いうさぎ。遠い記憶がむくりと蘇る。『ハンサムな彼女』の未央ちゃん! 小学生のとき、大事に大事に使っていた雑誌『りぼん』のふろく「りぼん手帳」だ。その瞬間、心はせわしない日常から『りぼん』に夢中になっていたあの頃にトリップする。カワイらしいキャラクターがふんだんに描かれているページをめくるほどに、ワクワクが止まらない。ああ、いつまでも眺めていたい…。

 きっと筆者のように、30代40代の元りぼんっ子たちがあの頃のワクワクを乞い求めているのだろう。『りぼんのふろく「カワイイ」のひみつ(集英社ムック)』(集英社)の人気がすごい。ネットで購入しようとしたら、発行直後にもかかわらず予約待ちばかり。あちこち探してなんとか手に入れることができた。本を開くとこれまでりぼんっ子をトリコにしてきたふろくとイラストの写真がいっぱい。「実果子ちゃん ハッピーベリー・バッグ」(『ご近所物語』)、「姫ちゃん メルヘンノート」(『姫ちゃんのリボン』)、「光希ちゃん パジャマタイムボックス」(『ママレード・ボーイ』)、「香澄ちゃん バレンタイン大作戦BOOK」(『星の瞳のシルエット』)に「ランゼ サマー・イラストポストカード集」(『ときめきトゥナイト』)。ふろくの写真をひとつずつ舐めるように堪能していると、ビニール製の透明なバッグに特に高級感を覚えていたな~とか、箱モノは引き出しがいっぱいついている方が好きだったな~とか、すっかり忘れていた想いがわらわらと蘇ってくる。

 だが、それだけではない。さらに夢中になってしまったのが制作秘話だ。大人になった今だからこそわかる血と汗と涙といった感がある。例えば、当時はまったく意識していなかったのだが、メインとなるものから紙片のちまちまとした絵柄まで、ふろくに描かれたイラストの量と言ったら! 当時は背景の細かい花やチェック、リボンの柄まで、すべて漫画原稿と同時進行で制作する漫画家の手描きだったというのだから驚く。ふろくの中でも花形だった組み立て式の立体ふろくも、ハートのおやつボックス(ハートという形の難しさ! 型崩れせずとても頑丈!)、カギが掛かるボックス(本物のカギと同じ構造!)など、考えてみれば小中学生にはもったいないほど恐ろしく精巧なものだった。これらはペーパークラフト作家がそのプライドにかけて、長く愛用できるように計算し尽くして生み出した緻密な設計図によるものだ。さらに、頭をひねってふろくのアイデアを出し続ける各印刷会社、パソコンが普及していない時代にふろくのレイアウトを手描きで作成していたデザイナーたち、250万個のふろくの袋詰めを任されていたという徳島の内職の人々。制作が始まってりぼんっ子の手に届くまで約6ヵ月。なんなら漫画原稿より制作のスタートがずっと早い。どれだけの人々が関わって、どれだけの時間と愛情が注がれていたのかと思うと、たまに「これはいらなーい」と捨ててしまっていた当時の自分に猛省を促したい。

 最近、すっかり紙のふろくを見かけなくなった。2001年に「日本雑誌協会」のふろく規定が見直されたことから、モノふろくに移り変わったのだそうだ。インターネットの普及や記録媒体の進化などによるものらしい。今や『りぼん』のふろくも、CD-ROMやショルダーバッグ、長財布など、実用性のあるものばかりだ。その中で、年の初めの「りぼん手帳」だけは相変わらず毎年のように作られているという。昔のように表紙は人気キャラのイラストではなく、お店にも売られているようなオシャレなデザインになっているけれど。確かにこれなら人の目を気にせず持ち歩けるだろうなぁ。でも、元りぼんっ子としてはちょっと寂しい。

 漫画ももちろん面白かった。でも、同じくらいふろくもものすごく魅力的だった。ふろくの絵を描きたいと、『りぼん』に作品を投稿した漫画家もいたというほどだ(『ママレード・ボーイ』の吉住渉もその一人らしい)。りぼんっ子を夢中にさせた独創的なアイデア、精緻な技術、筆舌に尽くしがたいカワイさは、もはや歴史に残ってもいいレベルだと思っている。ふろくにかける大人たちの情熱が、『りぼん』を支えてきたといっても過言ではないだろう。私たちもすっかりいい大人になった今、改めて『りぼん』のふろくの素晴らしさを噛みしめる次第である。

文=岩瀬由希