ヒトラーとUFOの関係とは!? 都市伝説がドイツ人を魅了し続ける理由

社会

2018/10/4

『ヒトラーとUFO』(篠田航一/平凡社)

 読者諸氏は、ドイツ人に対してどんな印象を持っているだろうか。小生は勤勉実直、質実剛健などと思っていたのだが、実はとても噂好き、都市伝説好きなのだとか。そういわれれば、地域にまつわる民間伝承を集めた『グリム童話』を生んだ国でもあった。そもそも民間伝承とは古来人々の間で伝わった、噂話だともいえる。そんなお国柄だからか、いわゆる20世紀の民間伝承であるUFO事件に対しても根強い人気があるという。

 都市伝説に興味がある読者なら、一度は耳にしたであろう「ナチスは第2次世界大戦中にUFOを作っていた!」という噂。本書『ヒトラーとUFO』(篠田航一/平凡社)は、そんな荒唐無稽ともいえる都市伝説が、なぜドイツ人を魅了し続けるのかを元毎日新聞ベルリン特派員として活躍した篠田航一氏がひもといていく。

 とはいっても著者である篠田氏自身、高校時代より「伝説と歴史的事実の境界を漂う話に強く惹かれた」とまえがきで述べており、頭ごなしに「荒唐無稽だ!」と否定してはいない。記者としての矜持を持ちつつ好奇心豊かに取材を重ねる姿勢は、「都市伝説は大好き!でも、踊らされないぞ!」と構える小生にとっても、実に共感できるものであった。

 ところでタイトルにもある「ヒトラーとUFO」の関係だが、確かにナチスドイツの兵器群は当時の技術レベルから見ても高水準で、それに尾ひれがついて広まったと考えるのが妥当かもしれない。しかし、尾ひれにはその胴体ともいえる幾ばくかの事実があるもの。本書によると実はドイツでは「飛行に最も負担がかからない形状として円盤型に注目していた」というのだ。

 当時、航空技師であったルドルフ・シューリファーが戦後、メディアに語った言葉がまた興味深い。「アイデアが生まれたのは1942年です。子供が水平に回転するプロペラの模型で遊んでいるのを見て、ふと思いついたのです」というのだが、その「水平に回転するプロペラ」とは、もしかして竹トンボのようなものだろうか? なんとなく日本の古典玩具だと思い込んでいたが、調べてみると15世紀にはヨーロッパにも伝わっていたらしい。玩具が科学技術の粋を集めた航空機開発に繋がるとは、意外過ぎてこれこそ都市伝説かと思ってしまうくらいだ。

 だが、結局は円盤型航空機計画も、旧ソ連軍の侵攻が激化した1945年4月には中断、シューリファーも設計書類を持って地元へ戻っている。なら、その設計書の行方が気になるが、1948年8月4日に作業場から盗まれたという。シューリファーは「一緒に働いたチェコの技術者がどこかの【外国勢力】のためにこの円盤計画を再現している」と確信したそうだ。

 肝心の設計書類が見つからない以上、確たる証拠はないんじゃないかとも思うが、これらの話は戦後にメディアで堂々と語られていたという。これはドイツの重要機密ではなく公に知られた話であり、ナチスのUFO伝説は半分くらい当たっていたと、著者は述べている。なるほど、これこそ「伝説と歴史的事実の境界を漂う話」である。

 また本書はナチスのUFO伝説以外にも、フリーメーソンへの直撃取材や、グリム童話「ハーメルンの笛吹き男」が実はほぼ史実と見られている件に関しても実に興味深い考察がなされている。さらには日本国内の都市伝説への取材もあり、読者諸氏の知的好奇心を満足させてくれるであろう。

 ネット上で簡単に、都市伝説にも満たない噂話が大量に見聞きできる昨今、中にはただ差別意識や疑心暗鬼を煽るだけのものも少なくない。そんなものに惑わされないためにも、本書を参考にその読み解きかたを学んではどうだろうか。都市伝説の根拠──いや、根拠とまでは言えないものの、きっかけとなる事象の存在を知るのも、きっと楽しいはず。ただ、壮大だと感じた伝説が、実は小さなイザコザに尾ひれが付いただけという事実を知って、拍子抜けすることもあるだろうが……。

文=犬山しんのすけ