サイボーグたちの反逆―正義とは何か?

公開日:2012/4/1

サイボーグ009 (1) 誕生編

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 石森章太郎プロ
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:石ノ森章太郎 価格:432円

※最新の価格はストアでご確認ください。

今から48年前に連載を開始したマンガをただいま24歳の若者が読んでいる不思議。もちろん、多少絵に時代を感じてしまうというのはありますが、名作は色あせないものですね。今なお十分に物語がしっかりと息づいていると思います。そしてマンガにおける昨今の能力バトルの走りであったのかもしれません。その分野を開拓したというだけでもすごいのに、時代を重ねて何度もリメイクされ今度もプロダクションIGでアニメをやるそうで今からワクワクが止まりません。

advertisement

しかしどうも「ヒーローもの」とひとくくりにできない作風が良い意味でもどかしく感じてしまいました。なぜなら、サイボーグの彼らは、元は普通の人間だったんですよね。そんな普通の人間が無抵抗のままに連れ去られて勝手に身体を改造されて、気づいたらとんでもない力を持っていた。けれど自分を改造した組織に従うことなく己の正義を貫こうとする。これって同原作者の作品にある「仮面ライダー」と構造はそっくりですよね。その展開がサイボーグたちに影を与えてしまっているんだろうなと僕は感じました。いわゆるダークヒーローというやつです。今回はそれが合計で9人もいるわけですから、それはそれは多彩なキャラクターがいるわけです。

しかし何といっても僕の童心をくすぐるのは主人公である009こと島村ジョーですね。加速装置、いわゆるクロックアップに通じる能力なんですが、やはりこの能力は作中では最強に近いのではないでしょうか。速さは時間操作系の能力にも影響しますからね、「相手が止まって見える」なんてやられた日には目頭が熱くなりますよ。そしてその加速装置の起動ボタンが歯に仕込まれているなんて、とっても心が躍る設定じゃありませんか。口元で「カチッ」と擬音が聞こえた時点で009が最強になる合図です。こういうギミックがあるからこそ、安心して彼の活躍を見ることができます。こういう分かりやすい演出は一見シンプルですが、読み手に展開しっかりと伝えるには、十分過ぎるほどの役割を果たしているのではないでしょうか。

加速の心地よさが抜群の009に、他8名の多種多様なサイボーグを巻き込んでの波乱が一巻にしてこれでもかと展開されています。本来であれば徐々に激しさを増すように物語を作るのが常套手段かもしれませんが、石ノ森先生はそんな悠長なことをしていられない性格のようで、サイボーグだけでなく多彩な兵器の応酬も見ることができ、やはりここの世代の戦争に対する関心の高さがそのあたりから垣間見ることができる気がします。時代を越えるとてもおもしろい作品なので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。


冷戦真っただ中の時代、当時の緊張関係がうかがえます

悪の統領が今後の人類のあり方を説いており、この思想こそがサイボーグの始まりとなるのです

改造済みのサイボーグたちの戯れ

さりげなく歯に仕込んだ加速装置のスイッチを押します、カッコいいです (C)石森章太郎プロ