ネットがあれば本は不要? 大学生の過半数が「読書0時間」時代に考えてみた

文芸・カルチャー

2019/2/15

『読書する人だけがたどり着ける場所』(齋藤 孝/SBクリエイティブ)

 わからないことはネットで調べればいい。だから本は読まなくていい――。そんな風に考える人が多い今、大学生の読書時間は過半数が“ゼロ”だという。確かに、日々の生活の中で本を読まなくても、直接“困る”ことはない。普通に大学に通い、友達と酒を飲み、ときには恋に落ち、将来の道を決める…。その過程の中で、読書が“必須”というわけではない。

 だが、本書『読書する人だけがたどり着ける場所』(齋藤 孝/SBクリエイティブ)は、それでも読書の必要性を説く。著者は、読書は“私たちの人生に深みを与えるもの”だと語る。読書によって知識や思考を磨いた“深い人”は、学問に取り組む姿勢、友人との会話の内容、進路を決める軸、そのすべてがより洗練されたものになるはずだ。

■「深い人」になるための読み方

 著者によれば、作品や講演に対する感想や質問には、その人の“深さ”が現れるという。その人に確かな教養がなければ、物事の本質を突くリアクションはできない。ここでいう教養とは、雑学や豆知識ではなく、自分の頭できちんと考え、血肉となった知識のことだ。自分の中に取り込んだ知識は、人格を形成する一部となり、人生を変えるほどの力を持つ。

 多くの人は、広大なインターネットの海における“浅瀬”しか見ていない――著者は、そう指摘する。たいていのネット利用者は、話題になったトピックの表層だけをサッと眺め、それを深く理解しようとしない。本当の教養を身に着けるためには、1冊の本にどっぷりと浸かる経験や、ネットにおいても1つの物事を多角的な視点から眺めるという習慣が必要だ。

■対話とレビューで思考を鍛える

 著者は、さらに思考を深めるための読書術も紹介している。ここでは、“対話”と“レビュー”の有用性について取り上げたい。これは、筆者も日々その効果を実感している。対話は、相手の何気ない言葉をきっかけに、ひとりではたどり着けなかった“気づき”をもたらしてくれる。ふたりが同じ本を読んでいても、注目するポイントや、良し悪しの判断基準はその都度違う。自分の考えを説明し、相手と意見を交わす過程で、その本に対する理解と思考は格段に深まっていくのだ。

 もし、話す相手が身近に居なければ、ネット上のレビューを読むことも十分刺激になる。そこにおいても、自分にない視点からの意見や、思いがけない発見が必ずあるだろう。中には、思わず反論したくなるものもあるかもしれない。だが、そういったレビューもまた、私たちの思考を拡張するものだ。他にも、「読んだ本のポップを書いてみる」「すきな文章を3つ選ぶ」などの方法も紹介されているから、チェックしてみてほしい。

 本書は、各章の末で「思考力を高める名著」「人生の機微に触れる名著」「難しくても挑戦したい不朽の名著」など、読書入門に最適な名著も紹介している。そのため、ブックガイドとして利用することもできる。なんとなく「本を読まなきゃ」と焦っている人は、本書でその意義を見つめ直しながら、自分に合った1冊を選んでみてはどうだろう。

文=中川 凌