予想を裏切る衝撃的なラストに涙…世界の未来のカギを握る少女が最後の1週間で見つけた「本当の自分」

文芸・カルチャー

2019/2/21

『そして8日目に愛を謳った。』(沖田円/小学館)

「本当の自分は、どこにいる?」――そんな苦しい問いを抱えながら生き続けている人は、一体この世界にどれくらいいるのだろう。

「ありのままの自分で愛されたい」「自分らしく生きていきたい」という想いは、きっと誰の心の中にもある。しかし、年齢を重ねるにつれて、周囲から求められる“上辺の自分”で生きていけばいいと思うようになってしまってはいないだろうか。『そして8日目に愛を謳った。』(沖田円/小学館)は、そんな問いを与えてくれる1冊だ。

 主人公である佐伯真魚は、周りが期待する「私」を演じている女子高生。友達にも本音を見せず、当たり障りのない毎日を送っていた。そんな人生は、差出人が明記されていない1通の手紙を受け取ったことにより、激変。手紙に従い、放課後、屋上へ行くと、そこには地味で大人しいクラスメイトの九条シキが白い羽を背中に生やして立っていた。

“「佐伯さん、聞いて。あと七日で世界が終わるんだ」”

 そう打ち明ける九条は、自身が実は天使であることを真魚に告白。九条いわく、人間に絶望した神様が世界を滅ぼす前に人間の中から「世界が消えるか、自分が消えるか」のどちらかを決めさせようとしており、その“選択者”として真魚が選ばれたのだという。

“「きみは、きみと世界、どちらを救う?」”

 九条のこの問いから、世界の破滅と自分の命を天秤にかけた“運命の7日間”が始まっていくのだ。

“嘘を吐いて、周りの全部を拒絶してる。親しみやすい人柄の鎧をまとって、本当の自分には誰も近づけないようにしてる。”

 九条が真魚に発したこの言葉は、“人から求められる自分”であり続けている人の心にグサリと刺さる。

 私たちは学校や職場などで、自分のキャラクターを作り上げてしまっている。小さくて閉鎖的な社会で面倒なく過ごすため、笑いながら優しい嘘を吐き、手放したくない大切な人にこそ、偽りの自分を見せている。だが、そうしたことを繰り返していると、自分で作った壁でいつのまにか、自分自身を苦しめてしまうことも多い。

 ありのままの自分はかっこ悪くて弱くて、ダサいもの。だからこそ、人は強い自分を演じたり、人に好かれるような振舞いをしたりする。けれど、どんなにかっこ悪いあなたでも必要としてくれる人や弱音を見せてほしいと思ってくれる人は、必ずいる。それを本作は訴えかけている。

 実は筆者も、昔からありのままの自分を見せることが苦手で、偽りの姿のまま生きてきた人間だ。誰かに求められる自分でいなければいけないと思う反面、誰にも心に近づいてほしくないという気持ちも抱えていたので、どう生きていけばよいか分からず、悩むことも多かった。

 けれど、30歳を目前にした最近は、自分らしい私で誰かと向き合ってみたいと思い始め、ダサくてかっこ悪い弱音も見せるよう、努力している。その中で感じたのが、自分は思っていたよりもひとりぼっちではなかったのだということ。勝手に設けた境界線で、孤独感を高め、自分の心を苦しめていただけだったのだということに日々、気づかされている。

 筆者や本作に登場する真魚のように、自分という人間を誰かにさらけだすことをためらってしまったり、見えない境界線を設けたりしてしまう人はきっと多い。しかし、あなたはありのままのあなたで生きていてもいい存在なのだ。それを心に刻みながら本作を読み進めていくと、いつもの世界がもっと優しく見えてもくる。

“わたしはこの世界が嫌いだ。全部嫌いだ。何も信じていないし、いらないし、くだらないと思っているし、誰のことも大切じゃない。”

 そう思いながら生きていた真魚は、刻一刻とタイムリミットが迫りくる中、最後の1週間で何を見つけ、どんな選択を下すのか。予想を裏切る衝撃的なラストに読者はきっと、温かい涙を流すだろう。

文=古川諭香