皇室の真面目な話からトリビア的なゴシップまで! 政治学者・原武史と作家・三浦しをんが語る、時代の変わり目に知っておきたいこと

文芸・カルチャー

2019/2/28

『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』(原武史、三浦しをん/KADOKAWA)

 まもなく平成が終わる。昭和天皇の崩御によって昭和から平成へと時代が変わった時とは違い、今回は今上天皇が「生前退位」されることを受けての元号改定。「未知」の元号へのカウントダウンを客観的に考える余裕があるという面では、30年前とは状況が大きく違うといえるだろう。

 実際、テレビや雑誌、ネットでも「天皇制」や「年号」の仕組みに関して特集が組まれ、関連書籍も続々出版されている。なかなか何をチョイスするのか悩むところだが、このほど登場した『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』(KADOKAWA)は、ふわっとしたタイトル通りのゆるいテンポで、皇室についての真面目な話からトリビア的なゴシップ(&鉄道、小説)まで教えてくれる不思議な一冊だ。

 本書は、政治学者・原武史さんと人気作家の三浦しをんさんによる対談をまとめたもの。朝日新聞の書評委員会で一緒だったことが縁で親しくなったというお二人の対談を企画したところ、はじまってみれば今上天皇が「生前退位」のご意向を示し、平成が終わることになるという時代の節目に。結果、「小説や天皇制や鉄道」について好きなように語り合う内容となったというのだが、中でも大注目は原さんからほとばしる不思議な「熱気」だ。前書きで三浦さんが「本書の読みどころのひとつは確実に、『原さんの鉄道オタぶりと天皇家オタぶりが常軌を逸している』という点だと思う」と書いているが、とにかく極度の皇室&鉄道オタクという原さんが気持ちいいほど炸裂するのだ。

 そして、そんなオタ特有の熱に絶妙につっこみ、さらなるオタ知識を引っ張り出す三浦さんの手腕も絶妙。たとえば永井荷風の『断腸亭日乗』に書かれた昭和天皇の噂が、後に不敬だということで後の本では伏せ字になったエピソードを原さんが語れば、「不敬といえば、女御と密通してできた子供が天皇になっちゃう『源氏物語』なんて紫式部は捕まるレベルではないのか?」と三浦さんがすかさずつっこみ。原さんは「皇室で一夫一婦制が確立されたのは大正天皇以降」と受けつつ、さらに天皇家にまつわる女性たちのちょっと怖いようなディープな話に突入していくといった感じ。突如、鉄道の話で脱線させたり、存在が謎に包まれた大正天皇(皇太子時代に旧友をいきなり訪ねて恐縮させたり、「日光で馬に乗った」という漢詩を残したなどほっこりエピソード多数)に妙に肩入れしたり、真面目かつフリーダムな原さんと、それをいなすかのような三浦さんの呼吸も楽しい。

 あとがきで原さんは「三浦さんが女性作家として、時にびしっと本質を衝く意見や質問をされることに、思わずはっとさせられた」と書いているが、確かに「アマテラスは女性の神様なのに、なぜ天皇家は女系を採用しなかったのか。思い切って、皇室そのものをなくすという選択はないのか」など、三浦さんの素直でするどい目線を通じて、あらためて私たちが考えさせられることも多い。脱力系の対談だからこそ、話題があっちにいったりこっちにいったり、ふらふらしながらじわじわと、時代の変わり目に知っておきたいことが見えてくる一冊だ。

文=荒井理恵