終電帰宅後、ビールを片手にとろ~り煮玉子をパクリ! 漫画で覚えるうっとり極上レシピ

食・料理

公開日:2019/3/5

『いいわけごはん』(杏耶/幻冬舎コミックス)

 忙しい毎日の中、癒しをくれるご飯の時間。「今日は頑張ったしご飯が美味しくできたから、ビールを飲んでもいいよね?」「仕事は腹ごしらえをしてからでもいいかなぁ」。自分に“いいわけ”しながらも、美味しい自炊料理で激務を乗り切る一人暮らしの男女を描いた漫画エッセイ『いいわけごはん』(杏耶/幻冬舎コミックス)。本書に登場するレシピがあまりにも美味しそうで、料理が苦手な筆者も思わず久々にキッチンに立ってしまった。

 主人公は漫画編集者の“ある女”と在宅デザイナーの“ある男”。2人の共通点は、一人暮らしであることと、激務の中での現実逃避・ストレス解消法が自炊した料理を食べることである点だ。忙しい社会人が自分へのご褒美、仕事を頑張る活力として食べる簡単でボリュームのある料理のレシピがたくさん登場する。最大の見どころは、全編カラーだからこそ表現できた料理イラストの“シズル感”だ。

煮玉子のとろ〜り感がリアル。残業して終電で帰宅した深夜、ビールを片手にパクリ!の瞬間。(c)杏耶/幻冬舎コミックス

 各エピソードの最後には詳しいレシピ付きなので、「美味しそう、食べたい!」と思ったらすぐに実行に移せる。家にある材料で作れそうだったので煮玉子を作ってみたところ、これが本当に絶品だった!

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料理が苦手な筆者でもやる気になるイラスト付きのわかりやすいレシピ。スーパーですぐに手に入る身近な食材しか使われていないところもいい。簡単に美味しい食べ物にありつけるなんて、ありがたい!(c)杏耶/幻冬舎コミックス

 著者はツイッターのフォロワー数は16万人以上、『ド丼パ!』(一迅社)、『あやぶた食堂』(宝島社)など数々のレシピ本を手がける杏耶さん(@ayatanponpon)。身近で美味しいレシピばかりを紹介しているのも“食いしん坊イラストレーター”として、毎日の食事を美味しく食べることを探求してきた杏耶さんならではだ。

 イラストの“シズル感”やレシピの内容もさることながら、本来健康に気を遣うべきアラサー男女がチーズモリモリのボリュームご飯を食べてしまうなど、ちょっぴり背徳感のあるエピソードもご飯が余計に美味しく見えるスパイスになっている。

 登場人物がする“いいわけ”も、働く人ならきっと共感できるので、読んでいると「みんな同じなんだ。息抜きも悪くないよね」という気分に。読んでいるうちにいつの間にか、自分が励まされていることに気づくという、ふつうのレシピ本にはない癒し効果のようなものも感じた。

スーパーの弁当を食べたらやることがなくなり、仕事をするしかなくなる在宅デザイナーの“ある男”は、健康のためにいいことだから、と突然料理を作り始める。これはテスト期間にいつもはしない部屋の掃除をしたくなる心境とまったく同じなのでは? 筆者にも身に覚えが…。(c)杏耶/幻冬舎コミックス

 かわいいイラストで子どもから大人まで楽しめそうだが、これはぜひ、ちょっと疲れた大人に読んでほしい。掲載レシピの料理を作れば、美味しくて、癒されるご飯の時間を迎えられるはず。

文=箕浦 梢