難しいことはナシ、ズボラな人でもOK! どこにでもある素材でできる超簡単レシピ

食・料理

公開日:2019/3/22

『どこにでもある素材でだれでもできるレシピを一冊にまとめた「作る気になる」本』(山本ゆり/扶桑社)

「丁寧な暮らし」に憧れるものの、現代人はなにかと忙しい。とてもじゃないが「毎日はできない」、そう感じている人は多いのではないだろうか。それは料理もしかり。手作りで栄養たっぷりのものを家族や子どもたちに食べさせたいと思ってはいる。ところが、使う食材や道具が珍しかったり、工程が複雑だったりすると一気にやる気をなくしてしまう。その結果、面倒くさくなっていつも同じメニューに…。自炊をすればまだよい方で、中にはスーパーの惣菜コーナーで済ませたり、加工食品を多用したりしてしまう人もいるかもしれない。そんな人は『どこにでもある素材でだれでもできるレシピを一冊にまとめた「作る気になる」本』(山本ゆり/扶桑社)を一読していただきたい。

 本書が秀逸なのはそのタイトルだと思う。「どこにでもある素材」「だれでもできる」というキーワードをちりばめているからだ。どれどれ、と思って見てみるとどのレシピも本当にシンプル。工程は3ステップ以内に収まっている。どれもこれもとてもおいしそうな上に、家にある食材で作れそうだ。本書には142のレシピが収録されているが、私はとりあえずそのうちの2品を作ってみた。作ったのは「鶏胸肉とネギのレンジオイル煮」と「エビと揚げレンコンのごちそうサラダ」。

 1つ目の鶏肉を使ったレシピは、胸肉である点がいい。モモ肉よりも安くて経済的だからだ。オイル煮というとなんとなくハードルが高いイメージがあるのに、レンジで調理しているのでお手軽。オイルで煮ているため、パサつきが気になる胸肉もおいしく食べられる。さらに、皿に材料を入れて調理しそのまま食卓に出せるのもポイントが高い。おしゃれな耐熱ガラスの食器を選べば、調理と皿を1つで済ませることができるという一石二鳥感。我が家に大量にあった長ネギを鍋物以外の料理で消化できたのがなによりよかった。

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 2つ目のサラダは、サニーレタスを水菜に変更するなど、いくつかのマイナーチェンジをした上で作ってみた。これはエビの殻剥きや臭み取り、油で揚げるなどいくつか面倒なステップがあったが、レンコンをパリパリに揚げてチップにして使うというのがおしゃれだ。レンコンは煮物にするくらいしか使いみちを思いつかない人にとっては、斬新な使いみちといえるかもしれない。なにより、少ない材料で豪華に見えるのがこのメニューのポイントなのだと思った。

 本書の魅力は、レシピだけではない。大阪生まれの著者によるなにわトークがレシピ横やコラムに満載なことだ。著者の運営するブログの月間アクセス数は600万PV、Twitterのフォロワーは30万人超。レシピだけでなく、他愛もない日常の出来事が綴られている。ブログをアップするときは、実際に料理を作ったときに自分が感じたことや失敗したことをそのまま書くことを心掛けているという。途中で失敗したときの復活策やこれは面倒と思う作業も隠さず書く。読者と同じ目線に立った等身大のレシピに親近感を覚える。食材のやりくりに関するコラムにはこのような記述がある。

料理には流行り廃りがあるが、どれも便利で、合う人には最高に合う、だから否定をするのはおかしいし、押し付けるのもまた違う。(中略)人と比べず、自分に合う方法だけをつまみ食いし、楽に生きればいい。

「自分に合う方法だけをつまみ食い」とは、肩の力が抜けたコメントだと思う。本書は、日々忙しく過ごしている人の役に立つことはもちろん、別の魅力もある。レシピ本であるにもかかわらず、本書は著者のチャーミングな一面が感じられるものに仕上がっている。著者をこの本で初めて知ったという人でも十分に楽しめるものになっているのだ。

文=いづつえり