平凡な女性が落ちてゆく、底なしの地獄。葉真中顕原作の『連続ドラマW 絶叫』の見どころを、徹底紹介

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2019/3/23

 一人の女性の壮絶な半生を描き、現代社会の闇を鋭くえぐった葉真中顕の社会派ミステリー『絶叫』(光文社文庫)。その待望のドラマ化作品『絶叫』が、WOWOWのドラマWにて3月24日より全4話で放送される(第1話無料放送)。その見どころを放送に先駆けて紹介してみよう。

 東京都国分寺の賃貸物件で、女性の孤独死体が発見される。猫に食い荒らされ、原形をとどめていなかったその死体は、警察の調べによって鈴木陽子(尾野真千子)という女性のものだと判明。捜査を担当する国分寺署の刑事・奥貫綾乃(小西真奈美)は、陽子の歩んだ人生を少しずつ知ることになった。

 刊行直後からミステリーファンの間で話題を呼んだ原作『絶叫』は、ヒロイン・鈴木陽子のキャラクター造型が秀逸だ。1970年代、地方都市のサラリーマン家庭に生まれた陽子は、トレンディドラマのような生活に憧れつつ、地元の学校に進学し、実家から通える中小企業に就職する。取り立てて目立つところのない、団塊ジュニア世代の平均値のような人生である。

 その平凡だが満ち足りた生活が、ほんの些細なきっかけで崩れてゆく。ブラック企業、風俗産業、そして犯罪……。『絶叫』がわたしたちに突きつけるのは、一度コースを外れたら這い上がることは難しい、セーフティネットなき現代社会だ。そしてその怖ろしさは、陽子のキャラクターが平凡であればあるだけ、誰にとっても切実なものとなる。

 今回のドラマ版では、実力派として知られる尾野真千子が、“平凡だが存在感のある主人公”という難しい役柄を好演。わたしたちの分身ともいえる陽子のキャラクターに、見事に命を吹きこんだ。

 やがて陽子は、神代武(安田顕)というNPO法人代表の男と、運命的な出会いを果たす。社会のルールとは隔絶したところで生きる神代は、『絶叫』のもうひとりの主人公だ。陽子とともに、巧妙な犯罪に手を染める神代。社会の盲点をついたその手法は、実際に起こったらと考えると、ぞっとさせられるものだ。不気味な存在感を放つ神代は、怪優・安田顕のはまり役だろう。

 なお原作『絶叫』には、文字でしか表現できない“仕掛け”が使われており、それがラストシーンと密接に繋がっている。この部分がどう映像化されているのかも、ドラマ版の大きな見どころ。原作者・葉真中顕さんによれば、「原作とは異なりますが、ドラマはドラマで素晴らしい展開になっているので、その違いに注目してみてください」とのこと(『ダ・ヴィンチ』4月号掲載のインタビューより)なので大いに期待したいところだ。

 20世紀後半から21世紀にかけて、日本社会に広がった闇を描く『絶叫』は、あなた自身が当事者だったかもしれない物語だ。奈落へと呑みこまれながら、必死に生きようともがく陽子はどこへ向かうのか。サスペンスと社会性を併せもった濃密重厚なドラマを、ぜひご覧いただきたい。

文=朝宮運河

『連続ドラマW 絶叫』(全4話)
原作/葉真中顕(『絶叫』光文社文庫刊) 監督/水田成英 脚本/池田奈津子 音楽/林ゆうき 出演/尾野真千子、安田顕、小西真奈美、片桐仁、前川泰之、小柳友、酒井若菜、要潤、麻生祐未
※3月24日(日)より、WOWOWにて毎週日曜22:00~放送(※第1話無料放送)