アイドルグループは当然のようにハラスメントにさらされている? 世にはびこるハラスメントの元凶を探ってみると…

社会

公開日:2019/3/26

『さよなら! ハラスメント 自分と社会を変える11の知恵』(小島慶子:編著/晶文社)

 ハリウッドの大物プロデューサーによるセクハラを告発したことに端を発した#MeTooのムーブメントは、2019年に入っても続いている。つい先日も週刊誌にて、大手ゼネコン社員が就職活動中の女子大学生に関係を迫ったことが告発されていた。

 なぜハラスメントは起きてしまうのか。それは自分の行為が、ハラスメントだと気づいていないということが大きい。だからハラスメントを指摘された際「そんなつもりはなかった」「あれはコミュニケーションだった」などと、否定してしまう人が多いのではないか。

 元TBSのアナウンサーで現在は作家としても活躍する小島慶子さんも、ハラスメントをされたことに気づかなかったり受け流したりしてきたと同時に、

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自分が普通だと思って行っていたコミュニケーションは実はハラスメントになっていたかもしれないと思い当たったこともありました。被害者であり傍観者であり時には加害者でもあった自分に気づいて、悔やむ気持ちが湧きあがりました。

と、告白している。そして自戒を込めて「もうやめよう」と呼びかけたい思いから、11名の作家や学者にハラスメントについての話を聞くことにした。その語りをまとめたものが『さよなら! ハラスメント 自分と社会を変える11の知恵』(小島慶子:編著/晶文社)だ。

■アイドルグループが当たり前のようにハラスメントにさらされているという不条理

 同書はいじめや大学の中での「アカハラ(アカデミック・ハラスメント)」などを取り上げてはいるものの、男女の間で生まれるハラスメントについて、多くのページが割かれている。各章完結なのでどの章からでも読めるが、個人的に推したいひとつは、武田砂鉄さんとのやりとりだ。

 武田さんはアイドルグループのメンバーが常に競わされファンへの神対応を求められるなかで、いつも誰かしら体調不良だったり、休養していたりする現実を「搾取だ」と述べる。恋愛禁止という人権侵害を押し付けられた彼女らに対し、文化人までもがそれが当然であるかのように語っていることを、「気持ち悪い」とバッサリ斬っている。

 確かにまだ子どもと言える年齢の女性もいるのに、彼女たちを「選挙」の名を借りたランキングで追い込み、「投票してやったんだから」「応援してやってるんだから」と、上から目線で評する構造がハラスメントなのかもしれない。対する小島さんも「お金を出せば支配欲を満たした上に社会参加欲も満たされて、女の子と握手もできるし面と向かって罵倒もできるのだから、よくできた娯楽だと思います。アイドルという性的商品を駒に、権力者の立場を満喫できるゲームですよね」と、憤りをもって答えている。

 もちろんこれは、あくまで一例でしかない。だがこの社会には当たり前のようにハラスメントが存在しているが、多くの人がそれを意識するどころか毎日スルーしている状況であることが、2人の言葉から読み取れる。

■男性の辛さは、男性自身が生み出したもの?

 一方、ジャーナリストの白河桃子さんとの対談では、

小島:私、男は強者だから多少雑に扱ってもいいと思ってたんですね。ハラスメントは条件反射で出てしまうもの、という視点をもって対策に取り組まなくては解決しないと思いました。

白河:(略)私たち日本の女性は「男の人も大変ですよね」とか「男女一緒じゃないですか」とすぐ言ってしまう。女のことだけ言うと批判されてきたから、もう反射的にそう言っちゃうの。でも、男女は必ずしも対称ではありません。

 というやりとりの後、ハラスメントに声をあげる当事者を1人にしないためにも、女性だけの問題ではなく社会全体の問題として地ならしするべきだと、小島さんは言う。そしてこの数十年、馬車馬のように働かされてきた男性たちの痛みを知ることが先で、男性が自身の加害者性を認める段階はその先にあるとも語る。そんな小島さんを白河さんは「やさしい(笑)」と受けとめているが、読み手として「そこまでバランスを取ろうとしなくても」と言いたい思いに駆られてしまう方もいるかもしれない。

 小島さんは専業主夫になった夫の代わりに働いてきたことで、家族に対して被害妄想めいた気持ちになることがあったことを同書で告白しているし、これまでおそらく、男性の辛さや苦しさを目にする機会が多かったのだろう。しかし以前紹介した『私たちにはことばが必要だ』(タバブックス)著者のイ・ミンギョンさんが「男性の不満のもとになっているのは男性への逆差別ではなく、男性が作り出した家父長制という構造である」と語っていたように、男性の辛さの原因の多くは、男性が自分たちで生み出したものかもしれない。ゆえに女性の寄り添いだけでなく、男性自身が社会構造を変えようとすることも必要だと個人的には思っている。(同書のレビューはこちら

 とはいえ現代にはびこるハラスメントの形を知り、何がそれを生み出したかや克服するカギはあるのかを考えるための気づきが、同書には溢れている。もうすぐ終わる「平成」という時代とともにハラスメントとお別れしたいなら、まずは読むべきと言えるだろう。

文=玖保樹 鈴