史上最高に真面目なヒロインがステキ過ぎる! 知性渦巻くお仕事小説

小説・エッセイ

2012/4/19

プロトコル

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 実業之日本社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:平山瑞穂 価格:540円

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平山瑞穂作品の特徴は、と問われたら、「一作ごとに作風が変わること」と答える。マジックリアリズム的手法でファンタジーノベル大賞を受賞した『ラス・マンシャス通信』と、糖尿病の青年の食餌療法を克明に綴る『シュガーな俺』が同じ著者によるものだと誰が思うだろう。その引き出しの多さには驚くばかり。そして『プロトコル』は、一風変わったヒロインが登場するお仕事小説だ。

ヒロインの名前は有村ちさと。彼女のキャラがもう、サイコーというか笑えるというか感心するというか、一度読んだらその飄々とした魅力にハマること請け合い。ちさとはコンピュータ会社に勤務する有能な社員ではあるが、あまりに堅物で生真面目過ぎて、人間関係はかなり不器用。同年代の女性が熱中するようなファッションや恋愛などにあまり興味はなく、日々真面目に仕事をしている。

そんな彼女の特技は「膨大な文字列から特定の法則や間違いを見つけだす」というヘンなもの。その特技が変な風に役立った。ある社員が勤務中に閲覧したサイトのURL一覧を見ただけで、エロサイトがどれだかすぐわかってしまったのだ。それを上司に告げると、その社員は懲戒解雇となってしまう。おさまらないのは辞めさせられた社員の方。彼はちさとに復讐すべく、とある計画を立てた──。

話はここから会社内でのトラブルを軸に、恋愛めいた事件だとか家族の問題だとか思わぬミステリ的な展開だとかが出てくるわけだが、ストーリーもさることながら、本書の最大の魅力はちさとのキャラ。その語り口調が素晴らしいのだ。彼女の性格をひとことで言えば「真面目」なのだが、真面目を極めるとこんなに面白くなるのか、と感心してしまう。エロサイトをチェックするくだりなど、けっこう卑猥な言葉も出てくるのだが、それも彼女が冷静に口にするとなんだかコンピュータ用語か社会学の専門用語のように見えてしまう。しかもその「真面目を極めたキャラ」が彼女にとって自然体であるということが伝わってくるので、違和感がなく、読み心地が実にいい。これは作者の筆力の勝利。

ちさとの語りを読んでいると、自分が考えているよりも世界は純粋でシンプルなもののような気がしてくる。抱えている悩みをちさとに相談すれば、ものすごくスッキリした解答を与えてくれそうな気がする。ちさとはあくまで周囲を気にせず自分らしくいるだけなのだが、それが妙に読者に元気と笑いと思わぬ発見を届けてくれるのである。本書はそんな小説だ。


表紙(ちっちゃ!)は馬の絵ですが、競馬小説ではありません。舞台はコンピュータ会社。だったら何故、馬なのか? それは読めばわかる!