2日に1回は事件が発生!『名探偵コナン』の奇妙な世界と「平成」の類似点とは?

マンガ・アニメ

2019/4/13

『名探偵コナンと平成』(さやわか/コアマガジン)

 「なりたいんだ!! 平成のシャーロック・ホームズにな!!」。これは、平成6年(1994年)に連載がスタートした『名探偵コナン』の最初のストーリーに出てくるコナンこと工藤新一のセリフ。このセリフが書かれていた時には予想していなかっただろう。『名探偵コナン』の完結を前に、平成という時代が、幕を閉じることになろうとは。

 『名探偵コナンと平成』(さやわか/コアマガジン)は、『名探偵コナン』を平成というテーマに沿って読み取った一冊。さやわか氏によれば、『コナン』は、平成の時代を反映した漫画と言って過言ではないのだという。確かに、『名探偵コナン』は、平成という時代の移り変わりとともに人気を獲得していったのだから、平成という時代を反映していても、おかしくはないはずだ。

 そもそも、『名探偵コナン』の世界は、時間の進みが遅い。2014年に発売された83巻「水色の想い出」の中で、ヒロインの蘭がこの物語の第1話が開始する直前のことを回想するシーンがある。「あれから一年もたってないのに随分昔の事のよう…」。

 実際は『少年サンデー』誌上で連載20周年記念特別号として掲載された作品であるのに、1年も経過していない、というのである。1年も経っていないはずなのに、作中では何度も四季が巡るし、事件は多発する。

『愛蔵版 ジュニア空想科学読本』第2巻(柳田理科雄/汐文社)によれば、『コナン』の世界では2日に1回は事件が起きている計算になるというのだから驚きだ。そして、その凄惨な殺人が絶えない世界の中で、コナンと蘭はもちろんのこと、多くのキャラクターたちが恋愛を楽しんでいる。

 しかも、捜査関係者たちにおいても例外ではない。警視庁捜査一課の佐藤刑事と高木刑事、千葉刑事と婦警の三池苗子をはじめ、同じく婦警の宮本由美もプロ棋士の羽田秀吉と腐れ縁だし、目黒警部も奥さんとラブラブだし…。

 事件が2日に一度起きる世界の中で、たくさんの男女が、惚れた腫れたという話題を繰り広げている。『コナン』は、そんな奇妙な世界なのだ。

 しかし、時の流れが遅い『コナン』の作中であるが、その中には平成の風俗や文化が豊富に登場する。『コナン』の作者・青山剛昌氏は原稿を仕上げたあと、担当編集者を集めて、長時間の会議を行うそうだが、その会議で、次回の殺人事件のトリックを決めているのだという。その際、編集者が最新の科学技術やおもちゃ、流行アイテムなどを、「ネタ」として持ち寄り、事件に使う方法をあれこれと話し合うのだという。

 たとえば、平成12年(2000年)に掲載された話には、殺人事件の被害者としてガン黒の「山姥ギャル」が登場し、平成17年(2005年)掲載話には、謎の暗号として「ギャル文字」が、平成21年(2009年)に掲載された話には、ゴスロリファッションの女性が登場する。テクノロジーの変遷をみるのも面白い。

 平成7年(1995年)に掲載された話では、使い捨てカメラやカセットテープが当たり前のように使われており、携帯電話が普及し始めた平成8年(1996年)には阿笠博士の発明として「イヤリング型の携帯電話」が登場するも、時の流れとともに、使われなくなっていく。時間の進みは遅くとも、平成の風俗の移り変わりがこの作品には詰め込まれているのである。

さやわか氏は言う。

平成年間で、日本人は大きな災害を経験し、大量の人の死を肌身に実感してきました。そしてそんな世界でも、私たちは他人と親密になろうとするし、一緒に生きようとします。これらの出来事は『コナン』の世界で起きていることと、そんなに変わりません。

『コナン』には、私たちの知っている時代、まごうことなき平成が描かれていたのです。阿笠博士の発明品がやがて現実のものになったのも、この作品が真の意味で平成に描かれたのだから、当然のことです。

 さやわか氏の分析は非常に興味深い。『コナン』が人気を得たのは、捉えどころのない平成時代をありありと描いてきたからなのかもしれない。平成に生きる人の現実感覚とマッチしたからこそ、『コナン』は国民的漫画になれたのかもしれない。

 これから『コナン』はどういう展開を見せるのか。令和の時代が訪れるこれからも注目し続けたい。

文=アサトーミナミ

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