「チームに多様性が必要」は本当? あなたのチームがうまく行かない理由を分析!

ビジネス

公開日:2019/6/24

『THE TEAM 5つの法則』(麻野耕司/幻冬舎)

 私たちの社会では、あらゆるところに「チーム」が存在している。会社組織は言うまでもなく、学生の部活やゼミも「チーム」といえる。個人で活動するフリーランスだって、いつもひとりで仕事をしているわけではない。その時々で参加しているプロジェクトがあり、その中では立派なチームの一員だ。

 チームは、メンバー同士の力をかけ合わせることで、個人で働く何倍もの成果を出すことができる。だが、チームのメンバーは、ひとりひとりが違う能力を持っていて、モチベーションが上がる場面もバラバラだ。だから、そのマネジメントを間違えてしまうと、彼らはせっかくの強みを打ち消し合ってしまうかもしれない。あなたのチームは大丈夫だろうか?

 本稿で紹介する『THE TEAM 5つの法則』(麻野耕司/幻冬舎)は、そんなチーム作りの法則を教えてくれる1冊だ。著者は、株式会社リンクアンドモチベーションの取締役・麻野耕司氏。社名にはあまり馴染みがないかもしれないが、組織向けの人事コンサルティングを行い、近年注目を集めている企業である(役所広司さんがやっている「モチベーションクラウド」のCMを憶えている人もいるかもしれない)。麻野氏は、いわば組織作りのプロ。成果を出せるチームと、出せないチーム…そこにはどんな差があるのだろうか。

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■「チームに多様性が必要」は本当か?

「ウチは、多様な人材を採用しています」と自慢げに語る企業は多くある。たしかに、多様性のあるメンバーたちは、お互いの強みを補い合い、素晴らしい成果を生んでくれそうだ。だが、どんな組織でも多様性が必要というわけではない、というのが著者の考え。ポイントは、「人材の連結度合い」だという。

 飲食店のスタッフや、スマホアプリの開発現場のように、「人材の連結度合い」が高い組織では、多様な人材が互いに交流し、ひとりで出せない結果が生まれる。反対に、営業や部品の組み立て作業のような「人材の連結度合い」が低い組織は、個性豊かなメンバーがいたからといって、全体の生産性が大きく上がるわけではないという。それよりも、それぞれの作業に適した能力を持つ人材を集めるべきだろう。

■メンバーそれぞれの人生を知っているか?

 チームで仕事をしていて、メンバーの言動や感覚が理解できない、ということはないだろうか。人は、それぞれ違うバックグラウンドを持ち、同じ状況でも異なる心理状態で仕事をしている。メンバーと共にうまく働いていくためには、ひとりひとりがどんなときにやる気を出すのか、どんなときに落ち込んでしまうのかを知っておく必要がある。そこで、本書は、「モチベーショングラフ」という手法を紹介する。モチベーショングラフとは、各々がそれまでの人生を振り返り、モチベーションの上下をグラフ化していくものだ。これをチーム内で共有すると、メンバーの特性が見えてくる。こうしたタイプがわかれば、自然とコミュニケーションの仕方も変わってきそうだ。

 本書は、目標の立て方やメンバーの選び方、意思決定のやり方など、さまざまな観点から「チームにおける法則」を教えてくれる。チームの運営に「万能の正解」はない。チームに必要な人材は、何をやるかによって変わるし、個人とのコミュニケーションは、その人の能力や性格によって変わる。チームに関して悩んでいることがあるのなら、まずはその相手を知るところから始めてみてはどうだろうか。

文=中川凌