大人気展覧会を1冊で展望! ミュシャの代表作を写真付きで紹介

文芸・カルチャー

2019/8/11

『ミュシャ 華麗なるアール・ヌーヴォーの世界』(ミュシャ財団:監修/小学館)

 19世紀末から20世紀初頭のアール・ヌーヴォー時代に活躍した芸術家、アルフォンス・ミュシャ(1860~1939年)。その繊細かつ耽美な作風の影響を受けたと語るアーティストは多く、世界各国でしばしば開催されているミュシャの展覧会は、毎回盛況を博しているという。2017年に国立新美術館で行われた展覧会では、約66万人を動員。これは同年に開催された展覧会の中でトップ級の入場者数であり、日本におけるミュシャ人気の高さがおわかりいただけると思う。

 そして今年7月13日から9月29日まで、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは展覧会「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ――線の魔術」を開催中だ。これに合わせてミュシャ財団全面協力のもと出版された書籍が『ミュシャ 華麗なるアール・ヌーヴォーの世界』(ミュシャ財団:監修/小学館)だ。

 19世紀末当時はまだ消耗品だと考えられていた広告ポスターを芸術作品にまで高めたミュシャ。優雅な女性像や印象的な円形の装飾、草花をモチーフにした文様など、その洗練された作風は「ミュシャ・スタイル」と呼ばれ、一世を風靡した。そんなミュシャ作品の一部を紹介しよう。

(図版:「モナコ・モンテカルロ」1897年 リトグラフ)
(c)Mucha Trust 2019

 鉄道会社PLM鉄道(パリ・リヨン・地中海鉄道会社)のために制作された広告ポスター。「パリからモンテカルロまで16時間、豪華列車の旅」というコンセプトを、汽車や観光客の姿ではなく、旅への期待に胸を膨らませる少女を描いて表現している。鉄道のレールや車輪といったゴツいモチーフを、ライラックやスミレなどの花に置き換えてしまう発想力も見事。

(図版:「夢想」1898年 リトグラフ)
(c)Mucha Trust 2019

 優しく微笑む女性の背景に花で飾られた円形装飾を配した「これぞ、ミュシャ・スタイル」という構図。元々はパリの印刷・出版会社であるシャンプノワの自社カレンダーとして考案され、のちに一般向けの装飾パネルや宣伝ポスターとして転用された。それほど人気が高い作品であり、本書の表紙にも使用されている。

(図版 左:「ルフェーヴル゠ユティル・ゴーフル:ヴァニラ風味」のラベル 1899年 リトグラフ
図版 右上:「ルフェーヴル゠ユティル・ ゴーフル:ヴァニラ風味」の箱 1900年頃 缶の箱にラベル
図版 右下:「ルフェーヴル゠ユティル・ビスケット」の容器 1899年 蓋・取っ手付き缶容器 オフセット印刷)
(c)Mucha Trust 2019

 ミュシャといえばポスターや装飾パネルのイメージが強いかもしれないが、活躍の場はお菓子・香水・石鹸などのパッケージ創作にも広がっていた。こちらは、フランスの菓子メーカー・ルフェーヴル゠ユティル社の商品ラベルとパッケージ、そしてビスケットの缶容器。菓子の原材料を象徴するケシの花や麦の穂を髪に飾った女性が目を引く。同社の頭文字「LU」を図案化した模様にも注目したい。

 このほかにも、本書にはポスターや装飾パネル、商品パッケージ、宝飾など、ミュシャの代表作がたっぷり掲載されている。作品群を愛でるヴィジュアル・ブックとしても充分楽しめる内容だが、特筆すべきは当時の時代背景について、アート初心者にもわかりやすく紹介しているところ。

 中でもミュシャが人気作家となるきっかけをつくった女優、サラ・ベルナールの存在はミュシャを知るうえで避けて通れない。ということで、本書ではサラにまつわる記述も多く盛り込まれている。作者や作品の背景について知っていると、鑑賞の楽しみが倍増するはずだ。

■展覧会情報

「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ――線の魔術」
・開催期間:2019年7月13日(土)~9月29日(日)
・開催会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2-24-1)
・公式サイト:https://www.ntv.co.jp/mucha2019/
 休館日、開館時間など詳細は上記サイトからご確認を

文=上原純