村に迷い込めば終わり……人が人を喰らう“食人文化”が蔓延する村から逃げ出すことはできるのか

マンガ・アニメ

2019/8/17

『肉祓村』(碧海景:原作、アビディ井上:漫画/マッグガーデン)

 世界には身が震えるほどおぞましい文化がある。「食人文化」「奉人」「生贄」などがそれだ。パラパラとページをめくる指が止まってしまったのはいつも決まって肉そぎのコマ。そこに描かれた恐怖は、肉をそがれた人間から感じるものだけではない。肉をそぐ人間側が発する“狂気”からも感じられた。

『肉祓村』(碧海 景:原作、アビディ井上:漫画/マッグガーデン)は、6年前に失踪した兄から手紙が届き、それを手掛かりに兄を探し出すひとりの高校生を主人公にしたホラー作品である。

 物語は、「自殺の名所」と呼ばれる富士の樹海で、主人公の夏目竜(なつめ・りゅう)が迷っているシーンから描かれている。竜は、同じく樹海に迷い込んだ藤ヶ谷愛衣(ふじがや・めい)と出会い、偶然にも肉祓村にたどり着く。そして竜は兄にそっくりな顔をした秋月和樹(あきづき・かずき)と出会う。そう、竜が樹海に足を踏み入れたのは、兄を捜すためだったのだ。しかし、竜は兄だと信じて疑わないが、和樹は身に覚えがないの一点張り。

 だが、娘と妻に呼びかけられ立ち去ろうとする和樹が竜に放った言葉はこの先の恐怖を暗示させるものだった。

「今すぐこの村から出るんだ“りっくん”」

“りっくん”は昔、竜が兄から呼ばれていたあだ名だ。そう、彼は竜の兄、夏目洋(なつめ・よう)だったのだ。そしてこの言葉の後すぐに、彼らを待ち受けていたのは逃げても逃げても振り切ることができない恐怖と、狂気に満ちた人間たちのおぞましい姿の連続であった。心してページをめくっていただきたい。

 1巻では、肉祓村の実態や兄が失踪した理由が明らかにならない。むしろ、様々なシーンで伏線が張られるため、謎は深まるばかりである。村人が口にする「イタイノイタイノ富んでいけー、肉祓様まで富んでいけー」とはどういう意味なのか。そしてなぜ洋は竜に手紙を書いたのか。竜と愛衣は果たして食人文化の残るこのおぞましい村から脱することはできるのか。

 多くのホラーマンガはフィクションだと捉えられがちだ。しかし、本作は、日本でも実在したと伝えられている文化を取り入れたリアリティのあるホラーマンガだ。いまも世界のどこかで食人文化は受け継がれているという説もある。この夏、リアルな恐怖を感じたい人は読んでみてはいかがだろう。

文=トヤカン