ああこの面白さをどうすれば伝えられるのか!
公開日:2012/5/9
この本の可笑しさを、どう伝えたらいいのだろう。正直、困惑させる本だ。
血まなこになって世界中を探してもこれほどすさまじく人を笑わせる本には出会えまい。といえばいいか。あるいは、笑止千万とはバカバカしくて相手にできないほどのレベルの低さを言い表す言葉だか、ほんとうに笑い殺してくれるほどのバカバカしさが地球の中心かと思うばかりの圧力でギッチリ詰まっている恐ろしい本。といえばいいか。
いやそれでも、この本のけた外れの可笑しさの神髄は描き切れていない。
オビに「爆笑必死」などとうたわれた本が結局は肩すかしのこけおどしであることはバスの運転手が不機嫌であるくらいよくあることだけれど、『板谷バカ三代』に限って爆笑しない人がいたらそれは日本語が読めない外人だけだ。
とにかく、ここに書かれた日本語は、すごい事態を引き起こす。
ひとつは、すべてが「実話」であることに誰もが度肝を抜かざるを得ないだろう。
著者であるゲッツ板谷の、祖母、父、弟の三代にわたるバカの血筋の炸裂する、ほとんど信じがたい愚挙が次々と紹介されるこの本の中で、父は火炎放射器のような草刈り機をはしゃぎながら使い「うっかり」自宅を全焼させる。会社のお祭りで披露するつもりの首をカクカク横に振る余興を練習しすぎ垂直にゲロを吐く。
祖母は「食にアナーキー」で、著者の友だちが遊びに来ると、牛乳とサイダーを混ぜた「サイ牛」という飲み物を必ず出す。やめてくれといったら、「牛ダー」と名前を変えてまた出してきた。
弟は、将来なにになりたいかと聞かれ真顔で「馬」とこたえた幼少期にはじまり、アルバイトの履歴書の「趣味」の欄に「ボクをグイグイとリードしてくれる人」、「扶養家族」の欄に「7人家族。それに犬が一個います」と書いていたという。
二つめには、ゲッツ板谷の文章の力がある。ありふれた日常の言葉をさりげなく並べているように見えて、要所要所の単語の選び方が抜群にうまい。だから抜群におかしい。
ウーン、雰囲気をやっぱりうまく伝えられていないな。でも、なにはともあれ、最強の笑えますブックを読まない手はないのだ。
とりあえず父「ケンちゃん」のエピソード
こんな話がどこまでも続いていく。ご本人たちの写真も入っていて、これがまたおかしい