こんなところにも数学が!? 小6でもわかるやさしい解説で読む日常と数学のつながり

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公開日:2019/10/1

『日常にひそむ うつくしい数学』(冨島佑允/朝日新聞出版)

 学生時代、数学が大の苦手だったという人は多いのではないでしょうか。学校で勉強する数学はどこか無味乾燥で「何のために役立つのか」と疑問を持ちながら授業を受けていた記憶のある人もいるかもしれません。しかし、意外にも私たちの身の回りには数学がいっぱいあるのです。

 自然、飛行機、ボードゲームなど、何気ない日常は数学で彩られているのです。「私たちは数学とともに生きている。この世界を数学的な視点で見てみよう」という趣旨で書かれたのは『日常にひそむ うつくしい数学』(冨島佑允/朝日新聞出版)です。数学が苦手な人のために「小6でもわかる、やさしい解説で考える」がコンセプトの本書。

 たとえば「ハチの巣は、なぜ六角形なの?」の項では、ハチの巣が三角形や四角形などのほかの図形ではなく、六角形になった理由が解説されています。六角形がハニカム構造と呼ばれていて、軽くて丈夫なためさまざまな工業製品に応用されていることは知っていたものの「なぜ六角形なのか」という根本的な理解が抜け落ちていたことに気がつきました。

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 このほかにも「なぜ、ぴったり13年・17年ごとにしか出てこないセミがいるの?」「きょうだいなのに、顔や性格が違う理由って?」など、言われてみるとちゃんと説明できない24の疑問に対する数学的な解説が収められています。

 本書を読むと、私たちの知識は断片的なものが多いということを感じます。結果だけは知っているものの、その前提まで理解できているものはごく一部でしょう。世の中には元々同じものであっても、姿を変えて別のものになっているものもたくさんあります。ところが、前提を理解できていないのでそれが同じものであったことに気がつかず、別のものと認識してしまうケースは多いはずです。

 つまり、この本を読むメリットは「パッと見、どう関係あるか分からない自然現象と数学の結びつきが少し分かる」こと。いいえ。分かったと言い切れるほどの自信はないので、「分かったような気がする」としておきます。

 本来、自然科学と数学はとても相性のよいもののはず。ところが、学校でこの2つの結びつきを理解するのは難しいでしょう。理系離れと言われて久しいですが、これは子どもの興味や関心が薄れたというよりも学校教育に大きな問題があると思います。

 先のハチの巣の例では、ハチの巣の形に疑問を持つところから始め、その理由を数学的に解説し、私たちの身の回りの工業製品にどう応用されているか、までがつながっています。そうした「つながり」を理解できれば、数学に興味を持つ子どもも出てくるはずです。

 理科は理科、数学は数学と分断してしまうので学問を「自分ごと」としてとらえることが難しくなってしまうのでしょう。身の回りの不思議と学問を結びつけるという点で、本書の果たす役割は大きいと感じました。

 一方で、どうしても分からなかったことがあります。「どうして飛んでいる鳥は、ぶつからないの?」という項に「複雑系」という概念が出てきました。シンプルなルールに従うシステムも複雑な挙動をすることがあるという話です。

 複雑系は、生態系、金融市場、気象などの自然界や人間社会のいろいろなところに見つけることができます。私たちの社会も複雑系。将来のことを予測するのは不可能なのです。

 他方、プロローグにはアインシュタインの言葉を引きながら、この世の中は理解可能であり「数学で説明できない自然現象は一つも見つかっていない」とありました。ここでクエスチョンマークが点灯します。

 理解可能だが、予測不能ということなのか。しかし、予測不能なのに、説明できるといえるのか。そもそも人間社会は「自然」ではないという別の前提があるのか。

 筆者には気になるところがあると、それについて考え込んでしまうクセがあります。そういうところが、数学でつまずいた原因だったのかもしれないと今になって思うのです。

文=いづつえり