性欲魔人、近親相姦神、ストーカー王…古今東西でもっとも「ドスケベな神」決定戦!

エンタメ

2019/11/7

『本当はドスケベな世界の神々』(TEAS事務所/ホビージャパン)

 一時期は芸能人や政治家などの不倫話がたびたび世間を騒がせたのに、このところめっきり聞かなくなって、ゲスな話好きな私としては寂しい限りである。そんな私のゲスアンテナに引っかかったのが、『本当はドスケベな世界の神々』(TEAS事務所/ホビージャパン)である。著名人のゲスな話というものは、自分とは関わり合いがないから愉しめるのであって、事実かどうかは重要視してないのだから、神話だって構わない(人はそれを無節操という)。

 さて、本書はギリシャ神話をはじめ、北欧神話、インド神話、日本神話などから“ドスケベな神様”のさまざまな逸話を取り上げており、大きく3つの章に分かれているので、それぞれから代表的なドスケベ神をピックアップしてみた。

■複数の相手と関係を持った「多情な神」

 夜空を彩る星座にはギリシャ神話由来のものが多く、その中には最高神であるゼウスの浮気が原因という逸話もまた多い。ゼウスの息子である太陽神アポロンも、ゼウスの正妻ではない女神レトとの間に生まれ、女神やニンフ(妖精)、あるいは人間を問わず女性に手を出していた。そのうえ美少年のヒアキントスを愛し、彼に横恋慕した西風の神ゼピュロスとの間で、男同士の三角関係まで神話に語られている。

 日本の神様も負けて(?)いない。出雲大社に祭られているオオクニヌシは8人の妻を持ち、産ませた子供の数は180とも181ともいわれる。本書によれば、「ラブコメ漫画の主人公かと疑う」ほどの女運で、美しいヤガミヒメに惚れられて結婚したものの、旅先でスセリビメにも惚れられると正妻として迎えてしまう。ヤガミヒメは孕んでいた長男を連れて実家に帰る。それで話が落ち着くかといえばさにあらず、浮気男として覚醒し、他の女神を口説き落とすこととなる。

■無理矢理相手を犯した「強姦まがいの神」

 レイプはれっきとした犯罪であるが神話には関連する物語は多い。妹や娘さえ妻としながら愛人までいたという北欧神話のオーディン(オティヌス)は、執念深いストーカーのような一面も見せる。ロシア王の娘リンダに執心し、正体を隠して戦士の身分で口説くも平手打ちを食らい、今度は鍛冶屋に姿を変えて近づいたところキスを拒まれたうえにまたも平手打ちされる。ならばインテリだとばかりに軍師となってみるものの、やはり強引に迫りすぎてしっぺ返しに遭うありさま。それでも諦めず、ついには女性医師に化けて王に取り入り、リンダお付きの医師に任命されると、病気になって身動きの取れないリンダを陵辱してしまう。なんとも胸の悪くなるような話ではあるが、このオティヌスは神の威厳を汚したとして、神々の世界から追放される。

■特殊な性行為を行った!?「異常性癖の神話」

 では気分を変えて、誰も被害者のいない話も紹介しておこう。主人公は神ではないが、ギリシャ神話に出てくる人間、ピュグマリオンだ。彼は女神アフロディーテ信仰が盛んだったキプロス島でいちばんの彫刻家であり、人間の体ほどの大きさのある象牙を材料に、裸婦像を彫った。アフロディーテは「性の女神」でもあったため、信仰する女性たちも女神にならって開放的なセックスを楽しんでおり、ピュグマリオンはそれを嫌っていたのである。そして理想の女性像を彫り上げた彼は、本当にその像に恋をしてしまい、衣類や宝石といった装飾品だけにとどまらず、色とりどりの花やペットとして小鳥までを彫刻に与え、ベッドで一緒に眠るようになったという。なんだか、ものすごく現代的な変態に思えてしまうのは気のせいだろうか…。

 最後に取ってつけた感じになってしまうかもしれないが、本書は文明や文化について思索する際にもおもしろい1冊だ。というのも、どうしてこれほど神々が多情なうえ、強姦などという要素を神話が含んでいるのかといった考察が、それぞれの物語紹介に添えられているからだ。

 それはたとえば、ある地域を統治する民族が自らの正統性を神の系譜として示すためであったり、あるいは強姦した神が罰を受けるエピソードも入れることで、読み書きのできない人々に法律を周知するためという目的もあったようだ。「ただの変態?」のように思えるピュグマリオンの物語でさえ、神話が生まれた当時の政治的背景を知る手がかりになるようで、非常に興味深い。ゲスな話には、世相が反映されるのだ。

文=清水銀嶺