文系に必要なのは「AI企画力」だけ! 文系AI人材になるための5つの秘伝
公開日:2020/1/21
AIに仕事が奪われる、あなたは大丈夫だろうか――。昨今の“AIブーム”に呼応して、こうした不安を煽る論調がさまざまなメディアで語られてきた。たしかに、これまで人が行ってきた単純作業は、AIに代替されていく。投資などの専門性の高い分野も、AIが判断したほうが効率的な場面もある。
だが一方で、AIが発達するにつれて、むしろ需要が高まる仕事もある。たとえば、“AIを使う仕事”だ。AIを作ることはできない文系職でも、大きなチャンスがある。
本書『文系AI人材になる 統計・プログラム知識は不要』(野口 竜司/東洋経済新報社)は、まさにその“文系AI人材”を目指す本だ。必要なのは、統計学やプログラミングの専門知識ではなく、どんな場面でAIが活用できるかという「AI企画力」だ。
『文系AI人材になる 統計・プログラム知識は不要』
【新しさ】★★★☆☆(これから基礎を学びたい人向け)
【実用性】★★★★☆(文系でもAIの基礎知識が身に着けられる)
【わかりやすさ】★★★★★(専門用語は極力排除していて、読みやすい)
【納得度】★★★★☆(著者自身も政策科学部卒の文系AI人材)
【オリジナリティ】★★★★☆(文系目線でAIを扱う本は珍しい)
(1)そもそも“文系AI人材”は何をする?
ひとことで言えば、理系AI人材がやらないすべての仕事。彼らが行うのは、主に「AIを作る」ことだ。だが、それだけではAIによって利益を生み出すことはできない。文系AI人材は、いまのビジネス環境で「どんなAIが必要か?」を企画し、プロジェクトのマネジメントや、現場への導入を行う。次の項目からは、こうした仕事をこなすために必要なことを解説していく。
(2)AIの基本を丸暗記しよう
まずは、AIに関する基礎知識を覚えよう。たとえば、「AI」「機械学習」「ディープラーニング」の違いはわかるだろうか。これは、「武士」「徳川家の将軍」「徳川家康」の違いだと考えるとわかりやすい。つまり、「AI」の中に「機械学習」が含まれ、「機械学習」の中に「ディープラーニング」が含まれているのだ。詳しい説明は以下の通り。
・AIとは、人間と同様の機能を実現させようとする技術
・機械学習とは、AIの一種。学習により特定のタスクを実行できるようになるAI。学習にあたっては、人が特徴(目のつけ所)を定義
・ディープラーニングとは、機械学習の一種。人間の脳の神経細胞(ニューロン)を模した学習法から発展。主にマシンが特徴(目のつけ所)を定義
本書は、この「AI分類」以外にも、「AI基礎用語」「AIの仕組み」を基本として解説している。専門用語は極力排されているから、構えずに読み進めてほしい。
(3)ざっくりとAIの作り方を知る
そもそもAIがどうやって作られているかも知っておきたい。「データ作成」「学習」「予測」、これがAIを作成するための3ステップだ。まず、「データ作成」においては、そもそも何に対してAIを作りたいのか、どんな特徴がそれを決定づけるのか、最終的に何を予想したいのかを決める。そして、実際のサンプルを大量に用意し、AIのアルゴリズムに投入していく。すると、どんな特徴が結果を左右するのかという “法則性”が見つかる(「学習」)。最後に、調べたい対象を作成したAIモデルに当てはめれば、それがどんな結果をもたらすかを「予測」することができる。
(4)さまざまな事例を知る
よい企画を立てるためには、実際の導入事例を知ることも大切だ。本書は、事例紹介に力を入れており、その数はなんと45(!)。たとえば、福岡ソフトバンクホークスのAIチケット販売の例を見てみよう。ソフトバンクのチケットは、需要に応じて価格が変動する「ダイナミックプライシング」を採用している。その価格を決めるのがAIの仕事というわけだ。過去の販売実績や試合の日時、チケットの売れ行きなどから需要を予測し、価格を変えていく。空きの多い試合を安価で捌きながら、人気の試合はどうしても欲しい人に高単価で売る。結果、すべてのチケットを定価で売るよりも、売上高の合計が上がるのだ。
(5)AI企画「100本ノック」をしよう
AIの仕組みを理解し、事例をインプットしたら、実際に企画を立ててみよう。著者は、「AI企画の100本ノック」を推奨している。「誰のために使うのか」「なんのために使うのか」といった視点から、複数人で50~100個ほどアイディアを出してみる。量が確保できたら、次は実際に使えそうなものを絞り込んでいく。その際、「AI導入後の変化量」と「実現性」を判断基準とするとよい。「実現性」が高く、「変化量」が大きければ、コストパフォーマンスの高い企画だといえるだろう。
【まとめ】 文系AI人材になるために、高度な専門知識やプログラミングの能力は必要ない。AIの仕組みを知り、実際の活用例を学べば、“AI企画”の土台はできるはずだ。あとは、自分の仕事に当てはめて、「どんなAIが必要か?」を考えていけばよい。
本書は、最低限必要なAIの基礎知識を与えてくれるだけでなく、スキルを身に着けるための道筋も示してくれる。今後、IT企業以外でもAIを活用する機会はどんどん増えていく。本書は、その波を後押しする一冊になるはずだ。
文=中川凌
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