男性からの“善意”のファッションチェックにうんざり!…だけど? 「なぜメイクする?」のヒントがここに

マンガ・アニメ

2020/3/29

『だから私はメイクする』(劇団雌猫:原案、シバタヒカリ:漫画/祥伝社)

 私事で恐縮だが、2週間に1度、自分の爪にネイルを施す作業が、日常生活を送る上で、もう何年も欠かせない行為となっている。お気に入りのマニキュアやネイルシールを駆使して仕上がったキラキラとした爪を眺めると、気分が高揚する。辛いことがあった時も、自分の好きな色や模様が美しく装飾された爪を見ると「まだ頑張れる!」と気持ちを立て直せる。ネイルはいつの間にか、ただ「可愛い」だけではなく、自分を鼓舞する欠かせないアイテムとなっていた。

『だから私はメイクする』(劇団雌猫:原案、シバタヒカリ:漫画/祥伝社)は、「なぜメイクをするのか」という根本的な問いについて考えさせられるオムニバス形式のマンガである。本書は、『浪費図鑑』で有名な劇団雌猫さんの『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』(柏書房)をコミック化したもの。オシャレをすることで、自己の意識だけではなく、周囲の反応が変わる。そのことに喜び、時に傷つく彼女たちの心情に大いに共感すると共に、時に涙があふれるほど清々しい物語が描かれていた。

職場でのファッションチェックにうんざりしていたが…

 例えば、Chapter.3に登場するのは、若者が多い職場に転職したにもかかわらず、会社の男性陣から、ファッションチェックをされる日常に辟易している亀山さん。女友達に会う予定があり、普段よりオシャレをして職場に向かうと、「今日どうしたんすか!」「気合入ってますね」「デート!?」「――あっでも化粧は薄い方がいいっすね!」など、放っておいてほしいのに善意によるアドバイスが止まらない。

 しかし、彼女はひょんなことから、勝手に苦手意識を持っていた年上同期のイケメン・吉成さんが、実はメイクが好きで、終業後、駅のトイレでバッチリメイクをした後、自分と同じコスメカウンターへ向かっていることを知ってしまう。そんな彼は、ゲイであるとこっそり打ち明け、会社でメイクをしない理由を、

「…難しいんすよね ファッションてね 自己表現の手段でありながら 他人と接する一番外側でもあるから 相手が自分を見る時ってその人の価値観っていうフィルターが入るから そこに込めた自分の思いが全て正しく伝わることなんてまずないんすよ」

と語り、自分にとっては「怒ってないこと」が一番大事だから、あえて会社では「ナチュラル武装」していると彼女に伝えるシーンは印象的だった。

 それを聞いた後の亀山さんの行動は、ぜひマンガを読んで確かめていただきたいのだが、メイクというものは、「私自身が、誰の前で、どんな自分でありたいのか」を基準に考えて、その時々で楽しんでもよいのだなと気づかされた。

 本書は他にも、“推しネイル”にはまって猛練習していたら、服が欲しくなったり、ダイエットにも興味が出てきたり、恋愛にも一歩踏み出す自信が湧き、貪欲に生きるようになった少女マンガ家の物語や、本書の全ての物語に登場する、「凄腕BA」と呼ばれる女性の、「メイクが薄くて野暮ったい」とクレームが付いた販売員初日のエピソードも収録されている。

 どんな環境であっても、自分が好きな自分でいるために、あっと驚く工夫をこらし、オシャレやメイクを楽しむ彼女たちを見ていると、今すぐコスメを買いに走り出したくなった。メイクは、自分自身が納得して楽しむことが一番大切なのだなと感じた、とても素敵なマンガである。

文=さゆ

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