U-20代表に裏金で招集→移籍金を釣り上げ!? サッカー代理人のヤバすぎる仕事がマンガに

マンガ

更新日:2020/6/4

『フットボールアルケミスト』(木崎伸也:原作、12Log:漫画/白泉社)

 “金の亡者”“錬金術師”と揶揄されることも多く、選手の移籍が決定すれば、「また○○か」「○○は出禁にしろ」と名指しで非難の対象になる。サッカーのサポーターから蛇蝎のごとく嫌われているのが、選手の移籍交渉や年俸交渉を代行する代理人だ。

 なぜ代理人がそこまで嫌われるのか。それは、100億円、200億円を超える移籍金も発生する現代のサッカー界では、移籍金の10%を手数料とする彼らの収入も膨大なものになるからだ。

 たとえば経済紙『フォーブス』のスポーツ代理人ランキング(2019年度)で第1位に輝いたジョナサン・バーネット氏の場合、彼が1年間に稼いだ手数料は少なくとも1億2800万ドル(当時のレートで約138億円)にもなるという。選手の将来も考えず、「高く売れるクラブ」への移籍ばかりを手掛けている代理人がいるとすれば、それは“金の亡者”と言われても致し方ないだろう。

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『フットボールアルケミスト』(木崎伸也:原作、12Log:漫画/白泉社)は、そんなサッカー代理人が主役のマンガ。原作を手掛けるのは、雑誌『Number』での執筆や多数のサッカー関連書で知られる木崎伸也氏だ。

 業界を深く知るスポーツライターが原作者とあって、本作に登場するエピソードは非常に生々しい。特に驚いたのが、無名の若手ブラジル人選手を日本のクラブに獲得させた後、裏金を積んで20歳以下のブラジル代表に招集してもらい、移籍金を釣り上げる……という話だ。サッカーのニュースに日々触れている人でも、「代理人ってそんなヤバいことまでするの!?」と驚いてしまうエピソードだろう。

 このマンガの中心人物となる先崎恭介は、国内外の移籍を手掛ける敏腕代理人だが、彼の行動にはグレーどころか完全にクロのこともある。しかも、裏金で代表に招集してもらう例は、本作で先崎が話すところによると「南米では常識」なのだという。このマンガはジャンルとしては「サッカーマンガ」になるのだろうが、読み応えとしては裏社会の実録モノを読んだときのような興奮と面白さがあるのだ。

 なお物語は、先崎のもとでインターンとして働く女子大生・夏目リサの視点で主に進行。彼女の夢は「国連で働くこと」で、正義感は人一倍強い。ルール的にもモラル的にも問題アリの仕事に、リサは怒りも葛藤も覚えながら向き合うことになる。読者はその感情に寄り添いながらこのマンガを楽しめるし、代理人の仕事の魅力も功罪も知ることができるのだ。

文=古澤誠一郎

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