朝起きられない子、食べられない子は自律神経が乱れぎみ!? 忙しくてもできる“62のいい習慣”で自立した強い子に育てる

出産・子育て

公開日:2020/9/20

子どもにいいこと大全
『子どもにいいこと大全』(成田奈緒子・石原新菜:監修/主婦の友社)

 朝なかなか起きられず、いつもなんとなく食欲がない。すぐに疲れてぐったりするし、病気でもないのに体調がすぐれない。そんなお子さんは、自律神経が乱れている可能性が高いそうです。筆者の子どもにも思い当たるところが…。

 子どもの自律神経を整えるための62の生活習慣が紹介された『子どもにいいこと大全』(成田奈緒子・石原新菜:監修/主婦の友社)によると、これらの症状は自律神経失調症のひとつで、起立性調節障害と呼ばれるもの。いまは自律神経が正常に働かない子がふえているらしく、起立性調節障害の子どもは、小学生では5%で20人にひとり、中学生では10%で10人にひとりと、驚くようなデータも報告されています。

子どもにいいこと大全 p.30

 この状況には、現代の快適すぎる生活が関係しているようです。本来、暑ければ汗をかいて体温を下げ、寒ければ毛穴を閉じて体温を逃がさないようにするなど、周りの環境にあわせて、意識しなくても体の調子を整えてくれるのが自律神経の役割。これらは動物的本能のひとつで、“ちょっとつらい場面”でこそ鍛えられるのだとか。

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子どもにいいこと大全 p.50

 たとえば、暑い夏はエアコンの効いた部屋ばかりで過ごしがちですが、子どもには外遊びをさせることが大切。外遊びでたっぷり汗をかいて体温を下げることで自然と体温調節機能を発達させ、強く育つそうです。こまめな水分補給や、午前中や夕方の涼しい時間帯を選ぶなどの対策を忘れずに、この夏はぜひ外遊びを!

 ちなみに、エアコンが効いた部屋で冷たいアイスクリームを食べるのも夏の楽しみですが、急激に内臓が冷えることで血流が悪くなり、自律神経の乱れを引き起こす一因に。アイスは、ベランダや外に出るなどして、暖かい場所で食べるのが良いそうです。

子どもにいいこと大全 p.94-95

 子どもの自律神経を鍛えるには、上記のような五感を鍛えることの他に、生活を整えてあげることも大切。ポイントは、「早寝早起き、朝ごはん」です。本書で生活面の監修をする小児科医の成田奈緒子さんが娘さんに実施していたのは「睡眠ファースト」の育児。「帰宅が遅くなったらお風呂をパス」「夕食は朝ごはんの残りや野菜スープなど質素にする」などの工夫で、「勉強なんかしなくていいから、夜8時には寝る」を実現していたそう。成田さんによれば、子育てのゴールは子どもの自立。そして、子どもを自立させるには、勉強や習い事より、まずは自律神経を整えることが第一優先です。

「生活を整える」と聞くと、時間や手間がかかりそうなものを思い浮かべていましたが、決してそうではなく、ちょっと頭を切り替えるだけで取り入れられるものや、親子の親密度が高まるような楽しそうな習慣が多く、どれもなんだか楽しそうだな、と感じました。成田さんは、共働きをしながら娘さんを国公立大医学部に合格に導いた方だと聞いて納得。本書には、理想的でありながら現実的で、忙しくても簡単に楽しみながらできそうな習慣がそろっています。

 後半では、テレビ出演も多い内科医・石原新菜さんによる食事面や運動面の生活習慣が紹介されていますが、こちらも「“黒ごま塩”でごはんが進む」「頭皮をモミモミするマッサージで愛情ホルモンがアップ」など、簡単かつ楽しそう(&おいしそう)な生活習慣が満載です。

自律神経がうまく働いていないということは、子どもの成長がおびやかされているということ。決しておおげさではなく、そのくらいの危機感をもつべき状態なのです。

便利で快適な現代社会では、「自律神経をきちんと育てる」意識をもつことがとても大切。子どもの自律神経をきたえるのは、親の一番の仕事といっても過言ではないのです。

 そんな言葉を受けて、ハッとさせられます。

 全身に張り巡らされて心と体の調子を整えている自律神経。それが乱れてしまっては、「朝は自分で起きて」「しっかり食べよう」といくら言い聞かせても、うまくできないのは当然。子どもにとって、不調な上に「やる気がない」と怒られたら、こんなにつらいことはないですよね…。

 自律神経が働くようになれば、親が起こさなくても機嫌よく目覚め、朝ごはんをたっぷり食べて、夜は自然と眠くなる上に、やる気や思いやり、社会性などが育つなど、いいことづくしだとか。子どもの「できない」が不調のバロメーターだと考えれば、そんな時こそ子どもを強く育てるチャンスかもしれません。

 可愛いイラストと、前向きかつ分かりやすいテキストが本書の魅力。ポジティブな気分になれる上に、子どもが自立した強い子に育ってくれるなんて、こんなにいいことはありません。育児が大変なことに変わりはないけれど、難しいことばかりに目を向けるのではなく、もっと楽しみながら育てることを考えてみてもいいかもしれない、そんなふうに感じられました。コロナ禍の新たな生活様式とともに、子育てをめぐる生活習慣を小さなところからひとつずつ見直してみたいです。

文=麻布たぬ