タイ発、本格法医学ミステリー×BL『Manner of Death』の日本語訳版が発売! 二転三転する状況と伏線回収に一気読み必至

文芸・カルチャー

更新日:2021/1/20

Manner of Death
『Manner of Death』(Sammon:著、南知沙:訳/KADOKAWA)

 STAY HOME期間をきっかけに、『2gether』『SOTUS』など、タイのBLドラマが世界的に熱狂的な盛り上がりを見せた2020年。現在もその熱は冷めることなく、引き続き良質な新作ドラマが次々と制作され、日本でも配信されている。そんななか、本格的な法医学ミステリーとBLを掛け合わせた『Manner of Death』がドラマ化され、タイとほぼ同じタイミングで日本でも配信されている。その原作が、ついに日本語で翻訳され、『Manner of Death』(Sammon:著、南知沙:訳/KADOKAWA)として出版された。

 タイトルの“Manner of Death”とは、“死亡の種類”の意味。法医学者である主人公のバンが、女性教師の死をきっかけに出会ったのは、この遺体の第一発見者であり、最大の容疑者である塾講師のテーン。バンとテーンは、法医学者と容疑者として出会いながらも、次第に特別な想いを抱いていく。その関係性が変化していく様がとても繊細に描かれているからこそ、感情移入し、のめり込んでしまうのだ。

 事件の真相を追ううちに、窮地に追いやられていくバンとテーン。「これ以上事件を追うな」という忠告を無視するたびに訪れる命の危険…。複雑で、二転三転していく状況とともに張りつめる緊張感と、テーンが抱える“秘密”。まったく先が予想できない展開に息を呑みながらも、後半になると、謎だったすべての伏線がキレイに回収されていくのはさすがのひと言。すべての行動、発言に意味があり、さらにその上でどうにもできなかったふたりの“愛”がどう絡み合っていくのか、一気に読み進められてしまう原作となっている。

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 ドラマでは描き切れなかったバンやテーンの家庭環境の深みや、テーンを取り巻くキーパーソンたちの心情など、すべての登場人物に“そうしなくてはならなかった”理由が描かれ、人間の奥深さ、欲深さ、嫉妬心、焦燥感、そしてそのすべてを凌駕する“愛”が描かれる。

 さらにドキドキするのがふたりの愛の心理戦。お互いが特別な想いを抱いていながらも、うまく関係を築くことができない姿ももどかしくてとてもリアル。まっすぐで想いをすぐに言葉にして、態度に表しながらも、何か影を感じるテーン、テーンを想ってはいるけれど言葉や態度に出すのが難しく、上手に愛情表現ができずに勘違いされてしまうバン。対照的なふたりを、バンの兄のブンをはじめ、周りの人たちが一役買って近づけていくところもおもしろい。SNSを使ったギミックなどで愛を深めたかと思えば、大胆なサプライズを決行するテーンなど、ふたりの恋愛模様も必読だ。

 この原作を手掛けたのは、医師免許を持つSammon氏。普段から医療に従事しているからこそリアルな解剖結果や、そこに至る原因などが丁寧に描かれ、医療に詳しくない人が読んでもわかりやすく、さらに興味を惹かれる描き方になっている。人気俳優であるMaxとTulのふたりが演じたドラマはすでに配信されているが、大筋は一緒であっても、出会い方やオリジナルキャラクターなどが原作とは違う描き方をされているので、また新たに1から楽しめるのも嬉しい。ドラマと一緒に読めば、さらなる『Manner of Death』の深い世界に触れることができ、よりバンとテーンのふたりの世界に引き込まれることだろう。

文=吉田可奈