23歳で体重23kgに… 人気料理研究家・料理ブロガーMizukiさんが拒食症を克服しレシピ本を出版するまでをつづる初のフォトエッセイ

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公開日:2021/1/27

普通のおいしいをつくるひと
『普通のおいしいをつくるひと』(Mizuki/主婦の友社)

 人気料理研究家・料理ブロガーとして活躍するMizukiさん。自身が運営するブログ『Mizukiオフィシャルブログ♡奇跡のキッチン♡』は月間300万PVを超え、3年連続レシピブログアワードグランプリを受賞している。また、Instagram(mizuki_31cafe)のフォロワーは2021年1月時点で62万人超え。

 そんなMizukiさんだが、実は過去には過度の拒食症になり、23歳で体重23kgにまで落ちて、いつ死んでもおかしくないというような状況になったことも。『普通のおいしいをつくるひと』(Mizuki/主婦の友社)は、そんなMizukiさんのこれまでが赤裸々につづられたフォトエッセイ。

普通のおいしいをつくるひと P.6-7

 本書によると、Mizukiさんは元々気が強くてプライドも高く、お姉ちゃん気質で真面目な性格だったそう。しかしその性格が災いし、あるときから体重計の数字が気になるようになり、増やしてはいけないという恐怖に囚われてしまったとのこと。そこから食べる量が減り、体重はみるみる減って、入退院を繰り返す生活に。入院しても、「せっかく体重計の数字が減ったのに台なしになってしまう」と早く退院したいと感じてしまい、一向に改善されない日々が続く。そして23歳のときには、なんと体重が23kgまで落ちてしまったのだとか。

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普通のおいしいをつくるひと P.57
「一歩ずつ前へ」で語られているそれぞれの思い…

 食べれば治ると分かっているのに、治りたいのに、家族への申し訳なさは募っていくのに、体重が増えるのが嫌で怖くて食べられない。自分1人では歩くこともできず、立つことすらままならず、お風呂も母親に入れてもらわなければ入れない、そんな状態。胃けいれんを起こして緊急搬送されたときは、「動かしたら死んでしまう」とまで言われたそう。

 しかしその中でも、元々好きだった料理への気持ちは強くあったMizukiさん。食品成分表やカロリーガイドを見るのも好きで、自分が食べる量は減っても変わらず家族のご飯は作り続け、自分では歩けなくなってからもスーパーへの買い出しには必ずついていった、と食に対する執着心がつづられている。

 では、そんな極限まで悪化した拒食症をいったいどうやって克服したのか。回復のきっかけになったのは、1人のお医者さんの存在だったという。Mizukiさんは、その先生に「必ず治る」「食べたくないなら食べなくてもいい、食べたいときに食べたいものをちょっとでも口にすればいい」と言われたことで初めて味方ができたと思えたそうだ。ここから、少しずつ体重も増え、回復の兆しが見えてくる。そしてその中で改めて「太りたくないという気持ち」と「母や家族に対する思い」を天秤にかけ、家族への申し訳ないという気持ちが勝ったのだ。

 ここからは、家族や周囲の助けもあって、さらに大好きだった料理にも助けられて、徐々に社会的なつながりも回復していく。まずはリハビリのために作り始めた手作りマフィンを病院内の売店で販売してもらい、その後知人に物件を紹介してもらってカフェをオープン。家族や幼なじみ、知人、地域の人たちに手伝ってもらいながら少しずつ社会復帰を果たし、健康な体を取り戻していったのだ。

普通のおいしいをつくるひと P.68-69
小麦粉とバター、卵で作るオーソドックスなマフィン

 筆者は料理を食べるのも作るのも好きで、むしろどうしたら痩せられるのかと常々思っているのだが、本書で拒食症のリアルな体験を垣間見たことで、普通に食べられる体と心があることは本当に幸せなのだと改めて考えさせられた。また、拒食症で苦しむすべての人にこの本を読んでほしいと感じた。今こうして料理研究家・料理ブロガーとして成功をおさめているMizukiさんでも、体重が23kgまで落ちて死にかけた経験を持っている。これは、今苦しんでいる人にとって大きな救いになるのではないだろうか。

 この『普通のおいしいをつくるひと』では、そのほかMizukiさんのブロガーとしての生活スタイル、仕事への取り組み方、料理への思いなども語られている。Mizukiさんがタイトル通り「普通のおいしい」を作り続けているのは、拒食症という経験を経て、普通の食生活を送ること、誰かに寄り添うことの大切さを人一倍感じているからなのかもしれない。本書を読んで、改めてMizukiさんのレシピ本を見てみたくなった。

文=月乃雫

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