夢を奪われた僕に、君が新しい夢をくれた――YouTube再生回数1000万回突破の楽曲『アトラクトライト』の世界観が小説に!

文芸・カルチャー

公開日:2021/2/18

僕が恋した、一瞬をきらめく君に。
『僕が恋した、一瞬をきらめく君に。』(音はつき/スターツ出版)

 夢を喪った少年が夜の公園で出会った少女。ひとり密かにギターを奏でる彼の曲に合わせて歌う彼女の声は、これまでに聞いたことがないほどに美しい音色だった。2人は共に楽曲制作をはじめ、絶望に沈んでいた少年の心に、新たな夢が生まれてくる。しかし彼女には、誰にも言えない悲しい秘密があった――。

 ボーカロイド技術を駆使した音楽プロデューサーとして活躍し、そのメッセージ性と音楽性が若者層を中心に熱い人気を集める*Luna(ルナ)さん。YouTubeの再生回数1000万回を突破した楽曲『アトラクトライト』の世界観をベースにした、珠玉の青春小説『僕が恋した、一瞬をきらめく君に。』(スターツ出版)が誕生した。手がけたのは、スターツ出版キャラクター小説大賞特別賞を受賞し、『未だ青い僕たちは』(スターツ出版)でデビューした新鋭・音はつきさんだ。

 主人公は高校2年生の男の子、朔田樹。東京の吉祥寺から、父親の地元である山と坂に囲まれた町へ引っ越してきたばかりで、新しい学校にも環境にもなじめずにいる。クラスメイトたちから話しかけられても「……別に」とそっけない態度をとって、誰も寄せつけようとしない。針ねずみのように自らの心を武装している。

advertisement

 そんな彼には、サッカー選手になりたいという夢があった。

 子どもの頃から懸命に努力して、夢に向かってまい進していたが、怪我によってその道を断たれてしまったのだ。

 一生を懸けられるほどの“何か”を見つけられる人は幸せだ。しかし、その見つけた“何か”をなくしてしまうのは、どれほどつらく、苦しいことだろう。

 サッカーを断念して以来、樹は何に対してもやる気を持てず、無気力、無感動に生きている。唯一心を落ち着かせることができるのは、夜の公園でギターを弾いているときだ。しかしその姿を、同じクラスの女子・沢石咲果に見られてしまう。

 いつも笑顔で優しく明るい、天真らんまんな咲果。樹がどんなに冷たい態度をとっても、彼女は気にせずに距離を詰めてくる。

「――いっくんの音楽は、人を幸せにする力があると思うの」

 樹自身が気づいていなかった音楽の才能を咲果は気づかせ、彼女もまた素晴らしい歌声の持ち主であることを披露する。そして、樹がサッカー選手になる夢を諦めたように、実は咲果も歌手になりたいという夢を諦めていた。周囲から、夢を見る前に現実を見ろと諭されて、傷つき、心に痛手を負っていたのだった。

 傷ついた者は傷ついた者を理解する。互いの痛みに共感を覚えた彼らは、音楽を通して惹かれあう。樹は咲果の歌声に、咲果は樹のメロディに癒されて、自分たちを少しずつ回復させてゆく。

 語り手である樹の視点で物語は進む。2人が出会い、恋が芽生えるまでの第1章。仲がゆっくりと深まっていく第2章。そして咲果が胸に秘めていた秘密が明かされる衝撃の最終章。彼女にまつわるさまざまな謎が解けたとき、樹だけでなく、きっと読者も驚き、涙するはずだ。

 全3章の構成で青春のきらめきと恋のときめき、夢を追うことの眩しさと困難さ、そして生の喜びが、あふれんばかりに詰まっている。

文=皆川ちか

*Luna – アトラクトライト動画はこちら