しぶしぶ出かける取材旅行は珍道中! ものぐさ作家のエッセイ集

小説・エッセイ

公開日:2012/8/3

用もないのに

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:奥田英朗 価格:399円

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奥田英朗さんが、編集者になかば強引に連れられ、しぶしぶ出かけていく取材旅行。その珍道中をおもしろおかしく描いたエッセーを集めたのが、『用もないのに』という1冊です。『用もないのに』と、タイトルも“嫌々出かけてきました”と主張しているかのようで笑えます。旅行とはいえ、一応、取材旅行。北京五輪の観戦、ヤンキースの試合観戦、楽天イーグルス地元開幕戦、フジロック、愛知万博、世界一のジェットコースター「ええじゃないか」体験、四国お遍路と、毎回、編集者側には、ちゃんとした目的はあるのです。

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北京ダック、讃岐うどんといった誘惑に負け、しぶしぶ重い腰を上げ、編集者にひっぱられて出かけていく奥田英朗さん。「気分転換に」という言葉につられ出かけたはいいが、締め切りがいつかも知らずに飛行機に乗り込み、旅先のホテルでせっせと原稿を書くなんてこともしばしば。文句を言いながら、弱音を吐きながら、旅を続ける奥田さんなのですが、なんだかんだ言って、やっぱり旅が好きなんですね。出不精なだけであって、好奇心の塊の奥田さんは、同行編集者の誰よりも、到着した土地の文化や食べ物に詳しいのです。

ずうっと行きたかったけれど、面倒くさくて出かけられなかった場所に降り立った奥田さんは、ちょっとひねた見方をしつつも、子供のように好奇心旺盛に旅を続けます。仙台では寒空の下、凍えそうになりながら楽天イーグルスの試合を観戦したり、愛知万博では炎天下の中、長蛇の列に並んだり、遊園地のジェットコースターで恐怖体験をしたりと、どのお話もとにかくおもしろい。いい感じに力が抜けたエッセイは、夏の暑い日に読むのにぴったりですよ。


収録されているのは7編のエッセイ。野球篇と遠足篇に分かれています

編集部が用意していたのは決勝戦のチケット。ところが準決勝で日本が負けてしまったために、3位決定戦を見ることに