「獣の巨人」ジークの過去、そして目的がいよいよ明らかに/アニメ「『進撃の巨人』The Final Season」第15話

アニメ

公開日:2021/3/28

進撃の巨人
©諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

 塔からエルディア人が住むレベリオ収容区を眺める夫婦と幼い息子。彼らは腕に腕章をつけている。塔の職員はにこやかに挨拶していたが、家族がエルディア人だと気づいたとたん表情を曇らせ水をかける。走り去る家族は、さらに道行くマーレ人から心ない言葉をぶつけられる。

「悪魔め」
「収容区から出て来るな」

 夫婦のうち夫はグリシャ、息子は幼少期のジークだ。

 ジークは戦士候補生として日中は訓練に励み、夜は祖父母に預けられる。祖父母はなぜグリシャたち夫婦が夜外出するのかいぶかしみながらも、孫のジークを可愛がっている。

 両親と遊ぶ時間のないジークは孤独だ。グリシャはマーレにいる他のエルディア人とは異なる教育をジークに施していた。マーレが教える歴史は作り話だというのだ。ジークは両親に愛されたくて勉強するが、戦士になりたいわけではない。

 そんな彼が知り合ったのが、「獣の巨人」の能力を持つ戦士クサヴァーだった。二人は仲良くなり、戦士と仲良くなったことを嬉々として親に話そうとした夜、彼は両親の抱える秘密を知ってしまう。父グリシャの抱える過去は重い。幼少期、無断で妹を収容区から連れ出したせいで、彼女はマーレ軍に惨殺された。グリシャは妹のような悲劇を二度と起こしたくないと願い、エルディア復権派として秘密裏に活動していたのだ。

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 だが、両親の期待に反し、戦士候補生ジークの成績は思わしくない。ジークが戦士にならなければ計画は進まないとグリシャは嘆く。そんな父親の声に耳をふさぎ、涙を浮かべて部屋の外でそれを聞くジーク。幼い彼は心に傷を負った。そんなジークの、唯一の理解者になったのはクサヴァーだった。

「マーレのために寿命を縮め他国を侵略するなんて、馬鹿らしくてやってられないよな」

 クサヴァーはそう話し、自分とジークは似た者同士だと言う。ジークは励まされ、収容区から出られなくても生きていれば良いと考えるが、直後にマーレ軍がエルディア復権派を追いつめようとしていることを知る。彼は危ないことをしないでと両親に訴えるが、受け入れてくれない。

 恐ろしいのは、グリシャたちが過激な考え方の持ち主に見えることだ。彼らはエルディア人解放を望むあまり、息子を危険にさらし、彼の気持ちを慮ることをしなかった。アニメでずっと悪役だったジーク。しかし彼も、もともとは普通の子どもだった。

 両親がエルディア復権派であり、いずれ自分も楽園送りになるだろう、とジークから打ち明けられたクサヴァーは、両親を告発して自分の安全を守るよう声を震わせジークを説得する。

「ジーク、きみは悪くない。きみは賢くていい子だ」

 クサヴァーにも辛い過去があり、ジークを息子のように大切に思っていた。ジークは両親を告発して、数年後クサヴァーの持つ「獣の巨人」を継承する。彼の心には、これ以上エルディア人が生まれなければ、差別もなく苦しみもなくなるというエルディア人安楽死計画が宿っていた。

 時を経てジークは、グリシャが告発後も生きていて異母弟エレンが巨人の能力を継いでいることを知り、マーレに潜入したエレンに会う。この兄弟は同じ意見のように見えるが、エレンの言葉はどこまでが真実なのかわからない。

「唯一の救い……エルディアの安楽死」

 時は現在。パラディ島の森でリヴァイとの戦いに負け、荷台に乗せて運ばれるジークはつぶやき、やがて叫ぶ。

「クサヴァーさん、見ててくれよ!」

 瞬間、荷台と馬車が燃え上がる。そこにはもちろんリヴァイもいる。

 何が正しくて、何が間違っているのか。
 その答えは、どんなに考えても出ないことを思い知らされる。

文=若林理央