突然、脇の下を見せつける? 純情な女子高生が、隣の席の男子に猛アプローチするも、その結果はいかに

マンガ

公開日:2021/5/13

となりの信國さんは俺のことが好きな気がする
『となりの信國さんは俺のことが好きな気がする』(安田剛助/白泉社)

 好きな人に振り向いてもらいたい。その一心で髪型を変えたり、メイクを変えたり、はたまた効果があるかどうかわからない怪しげなアプローチ法を試してみたりする。その姿はときに滑稽に映るかもしれないけれど、誰かを思い行動するのはとても尊いことだと思う。

『となりの信國さんは俺のことが好きな気がする』(安田剛助/白泉社)の主人公である信國さんも、好きな人のために自分を磨き、恋愛テクを実践していく愛らしい女の子だ。

 大自然に囲まれた田舎に住む信國さんは、流行りに疎い女子高生。昔から小説が大好きでそればかり読みふけってきた。ところが、ここ最近はティーン向けのファッション誌を手に取り、「モテテク」が掲載されているコーナーに夢中だ。その理由はズバリ、恋をしてしまったから。

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となりの信國さんは俺のことが好きな気がする

となりの信國さんは俺のことが好きな気がする

 信國さんが想いを寄せるのは、都会から転校してきたばかりの男子・佐々木くん。偶然隣の席に座ることになり、話す機会も少なくない。でも、信國さんにはどうしたらいいのかわからない。本の虫だった信國さんは恋愛経験がなく、好きな人にどうアピールすればいいのか想像もつかないのだ。そこで頼るのがモテテクの数々。本作は、信國さんが佐々木くんに対し、さまざまなモテテクを実践していくさまを描くラブコメである。

 ただし、信國さんはどこかズレている。たとえば「愛されテクは脇の下から!?」という記事を真に受けては佐々木くんに脇の下を見せつけたり、「男子は女子の寝顔にときめく!?」という記事を信じて、佐々木くんの前で不自然な寝たふりを披露したりする。

となりの信國さんは俺のことが好きな気がする

 信國さんがモテテクと信じている行為の数々は、佐々木くんを困惑させるばかり。一体どうして彼女は、こんなおかしなことばかりするのだろう……。戸惑いつつも佐々木くんは、ひとつの結論に達する。

となりの信國さんは俺のことが好きな気がする

“やはり…信國さんは俺の事が好きなんだろうか…”

 本来、モテテクというのは「自然なカタチ」で相手にアプローチし、振り向かせるためのものだろう。それで言うと、信國さんは根本的に間違っている。けれど、その一生懸命さが伝わり、佐々木くんの心を動かしていく。結果的にアプローチに成功しているという、非常に稀有でユニークな例だ。

 やがて、信國さんの気持ちは佐々木くんだけではなく、クラス中にもバレてしまう。そして誰もが思うのだ。もうお前ら、早く付き合えよ、と。

 作者の安田剛助さんは前作『じけんじゃけん!』(白泉社)でも、好意がなかなか届かない高校生同士のラブコメを描いてみせた。くっつきそうでくっつかない様子は読み手をやきもきさせると同時に、主人公たちを最後まで見届けたいというリーダビリティにもつながる。安田さんはそんな描写の名手だ。本作ではそれが遺憾なく発揮されている。

 第1巻のラストでは、放課後、一緒に帰ることに成功した信國さん。まだ胸の内を伝えることはできていないものの、着実に佐々木くんとの距離は縮まっているようだ。はたして、信國さんと佐々木くんがカップルになる日は訪れるのだろうか。不器用なふたりの恋路を応援していきたい。

文=五十嵐 大