ある日突然くる親との別れ…。親が元気なうちにかけるべき言葉とは

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公開日:2021/9/29

ゆる終活のための親にかけたい55の言葉
『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)

 まだまだ続きそうな新型コロナ禍。超高齢社会が進むなか、地震や気候変動による自然災害も増え、自分自身の“もしものとき”を考えることが多くなった。近頃は、エンディングノートや実家の片づけといった“終活”にまつわるワードを普段からよく耳にする。気にはなっているのだが、自分の親のこととなるとなかなか思うようにはいかない。

 そんなとき、本書『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)をきっかけに、これからの時代、親の“終活”をスムーズに進めるにはどうしたらいいのか、親だけじゃなく自分自身も“終活”を日常的にはじめておくのも良いかもしれない。

 日本初の喪主向け葬儀実用誌を発行したという、著者の奥山晶子氏。冠婚葬祭互助会での勤務からはじまり、「NPO法人葬送の自由をすすめる会」の理事を務め、現在は葬儀や墓、介護、相続、遺品整理など、終活関連について多く執筆している。「この本は、親が生きていて元気なうちに、子どもの側から終活を働きかけるための本」と言う通り、元気なときだからこそ辛気臭くならず聞きやすい話もあるはずだ。

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 親の“終活”状況について、自分はどのくらい把握しているか。本書の“親にかけたい55の言葉”から5つピックアップしてみた。

①「そういえば、うちって何宗?」(P16)
 早めに知っておきたいのは、自分の家の菩提寺の名前。なぜなら、葬儀をすることになったら、喪主が菩提寺に連絡を取らなければならないからだ。

②「お寺に、年間いくらか払ってるんだよね」(P45)
 菩提寺があって、墓を引き継ぐ場合は、年間いくらを、いつ、誰に納めるのか。寺院墓地の場合は独自の納め方があるから注意が必要になるそうだ。

③「いい保険知らない?」(P100)
 親が今入っている保険について知りたいとき、自分の保険を相談する形で、親自身がどの保険にいくつ入っていたかなど、改めて確認できるきっかけにもなる。

④「ちょっとお父さんのパソコン貸して」(P102)
 親のパソコンやタブレットのパスワードを教えてもらえれば、「デジタル遺品」の問題回避になるという。パソコンやインターネット上の相続に必要な資料や葬儀等に必要な住所録、ネットバンキング、FXなど、お金に関わることはしっかり把握しておこう。

⑤「知り合いが相続でモメてさ。土地があってお金がないとモメやすいんだって」(P105)
 相続の話など、聞きにくいことは、第三者の話題にしてみると、話を引き出しやすくなることもあるそうだ。

もし親が「無宗教葬を行いたい」と言ったら?

 親が「無宗教葬にしたい」と言ったときは要注意なのだそう。菩提寺があるにもかかわらず、無視して無宗教葬を行うと、トラブルになる可能性が高いという。菩提寺の墓地に入れなかったり、お布施を納めなければならなくなったりすることもあるから、親子でしっかり話し合うことを勧めている。

元気なうちから早めに準備! 心身のダメージを軽減して

 ちなみに私の話になるが、実父、義父の臨終に実際に立ち合ってみて、家族の死後は想像以上に、大変なことだった。

 例えば…「一番早いお日にち、“◯日”に御予約を入れておきますね。お寺には、明日朝7時ピッタリにお電話してください。くれぐれも当方へ先に連絡していることをお伝えしないように、ご都合を聞いていただけますか?」と、某葬儀屋。

 父の入院後、容態悪化で徹夜続きとなった。臨終を迎え、地元の葬儀屋さんに連絡を入れた直後の僅か2時間後からスタートした打ち合わせでの出来事だ。深夜10時から夜中2時まで続いた不慣れな打ち合わせ。なかなか難易度の高いミッションを喪主は命じられた。どうやら、葬儀場のスケジュールは立て込んでいるようだった。体力的にもフラフラな状態のままの喪主をはじめ、その家族は否応なしにノンストップで葬儀を執り行うことになる。

 これはあくまでも、一個人の体験であり、地域性やタイミングによって違いはあるだろうが、元気なうちから早めに準備をしておくことで、自身や家族の心身的なダメージをできるだけ軽減してほしい。

 本書は、葬儀やお墓、介護、医療、生前整理、相続といった“終活”全体にわたり、やさしく詳しい解説で読みやすい。入門からでも応用編としても使える一冊だ。

文=Sachiko

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