梅宮辰夫が最後に伝えたかった料理と家族への思い。亡くなる直前まで書き続けた2000レシピの中から紡ぎ出す愛情レシピ集!
更新日:2021/11/16
俳優・梅宮辰夫。みなさんはどんなイメージをお持ちだろうか。『仁義なき戦い』などの東映の看板スター、テレビドラマでの名脇役、バラエティなどで見せるお茶目な一面…。しかし何といっても、梅宮辰夫さんが他の役者と異なるのは、美食を極めた料理人としての印象ではないだろうか。『くいしん坊万歳』『料理の鉄人』など料理番組に数多く出演し、軽妙なトークと腕前を披露していたのを、多くの人が記憶しているはずだ。
膨大なレシピの中から、簡単でも絶品なレシピをセレクト!
そんな辰夫さんが亡くなってまもなく2年(2019年12月12日没・享年81歳)。遺言書の代わりに、直筆のレシピ帖を家族に託したとのこと。亡くなる直前まで、黒い分厚いノートにレシピをびっしりと書き込んでいたそうで、目次や表紙もあり、なかにはテープで補強しているものもある。いかに料理を愛し、このレシピ帖を大切にしていたかがうかがえる。梅宮ファミリーにとっては、まさに宝物のレシピ帖だろう。
そのレシピ帖を受け継いだのが、娘でタレントの梅宮アンナさん。料理はあまりしてこなかったというが、父親の料理を引き継ぎたい、もう一度食べたいとの思いから、一念発起。料理初心者の自分でもできるレシピを、父親のレシピ帖からピックアップしたというのが『梅宮家の秘伝レシピ』(梅宮アンナ:監修/主婦の友社)だ。
このレシピのチョイスがとてもいい! シンプルだが、いかにも美味しそうな料理を網羅している。美食家の芸能人というと、高価な食材を手間掛けて作っているイメージがあるが、「梅宮家の秘伝レシピ」というだけあって、簡単で安価な食材で作れるレシピばかりだ。
レタスを牛脂で炒めるだけの「レタス丼」など、他の料理本には載っていないだろう。ニンニクを効かせた「マグロの漬け丼」や、ニラとネギをたっぷり使った「パジャン」と呼ばれるしょうゆだれも、すぐにできて、今すぐ食べてみたいと思わせる代物だ。
料理を通して家族への思いを伝える、昔気質な父親
本書には梅宮家のエピソードも多く登場する。実はアンナさんが結婚する時、このレシピ帖の中の数冊を渡されたそうだ。離婚した時に辰夫さんから最初に掛けられた言葉が「あのレシピ帖、返せよ」とは、笑いを誘う。
俳優として忙しい時期にもかかわらず、娘のために辰夫さんが6年間お弁当を作り続けたという話にも驚きだ。お手伝いさんに頼んだり、他の人に任せたりしてもいいのに、自分で手作りするという、昔気質な愛すべき父親像も垣間見られる。
帯文にも書かれているが、父親のいるときは料理をしなかったのに、亡くなってから父のレシピ帖を開いて、キッチンに立ち始める…。父娘関係は本当に不思議だ。
レシピ帖としても役立つのはもちろん、料理を通して家族への思いを伝える父親の愛情に触れられるのも普通のレシピ本と違ってとても心地よい。
料理のレパートリーを増やしたい人も、スター俳優の意外な家庭生活を知りたい人にも、満足できる1冊となっている。