職場の理不尽は「仕事に対して無感情」になることで解決!? カレー沢薫初のお仕事エッセイ

ビジネス

公開日:2022/3/10

反応したら負け 仕事のストレスを受け流す33のヒント
『反応したら負け 仕事のストレスを受け流す33のヒント』(カレー沢薫/PHP研究所)

 職場というものは日々ガマンの連続だ。でもタチの悪い上司や同僚と毎日のように顔を合わせていると「仕事は仕事!」と自分に言い聞かせても、徐々に職場のストレスに頭の中が侵食されていく。職場で受けたストレスは私生活にまで及んでいき、毎日が楽しくなくなってしまうものだ。そんなモヤモヤを抱えていた時、手に取ったのが『反応したら負け 仕事のストレスを受け流す33のヒント』(カレー沢薫/PHP研究所)だった。

 本書は約10年の会社員経験があるカレー沢先生が、「パワハラ上司」はもちろん、「成果を横取りする人」「仕事を抱え込む後輩」「メンタルダウンした上司」「責任丸投げオジサン」「エクセルデータ破壊おじさん」などなど職場によくいるヤバい人たちの生態とその対処法を綴った1冊だ。しかし、これはマネージメントのプロが書いた本ではない。カレー沢先生自身は、「会社員時代は底辺を越えた半地下の社員として給料をかすめ取っていた」ようなポジションだったそうだ。

 でも、半地下の社員でありながら10年間同じ会社に居続けることってとんでもない才能じゃないか…? 一体どんな処世術を使っていたのか気になるが、その秘訣は「仕事に対して無感情」であることだそうだ。

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 仕事に対してやる気がない人間は「仕事如きに悩まされたくない」と思っているため、いかに社内での面倒ごとを避けストレスを受けないようにするかに命を懸けている。このタイプが仕事でウツになることはない、とカレー沢先生は断言する。仕事にやる気がありすぎて病み、健康を害すくらいなら“「(仕事が)デキない人」のスタンスを真似る”そんな手段を本書では勧めている。では職場でヤバい人に遭遇した時、「デキない人」流はどんな風に対応するのか。

 例えば「マウンティング」。彼氏自慢やタワマン自慢のイメージの強いこの言葉だが、実際のところは職場でのマウンティングも横行している。そういう人には適当に「すごいですね!!」とあしらえばいいと思っていたが、実は違うらしい。真面目に聞きヨイショをするやり方では子分になってしまい、次第に「すごいですね!! 自分なんて…」と自分を下げるパターンになっていく。そうすると自己肯定感がどんどん下がっていく。

 ではどうすればいいのか。カレー沢先生の答えは2つある。

 ひとつは「真面目に聞かない」こと。世の中的には聞き上手こそが最強のコミュ強という風潮になっているが、マウンティングをするタイプはことあるごとに優位に立とうとするので、マウンティングだと気付いた瞬間にうわの空になることが大切だ(まずマウンティングに気付けることがとても重要らしい)。

 そしてもうひとつが「あえてダメなネット民を見習う」こと。女性が偉業を成し遂げても「でもブスじゃん」とどうしようもない指摘をして勝手に勝利宣言している人たちのことだ。それを見習い、相手がマウンティングをしてきた瞬間に「でもお前、口臭いよな」と、まったく関係のない相手の欠点を見つけるだけでも、マウンティングによるダメージを回避できるという。

 どんな方法であろうと自己肯定感を守るためには手段を選んでいられない。どうすれば自分が餌食にならないか、はたまた巻き込まれないかを考えて生きるすべを本書は教えてくれる。

 軽妙なエッセイやキレキレのギャグ盛りだくさんのマンガで人気のカレー沢先生だが、本書に出てくる生々しい登場人物や解決法の数々に、これは確かに会社、職場という組織にいた人が書いた本だなと納得できた。職場の人間関係なんて辞めてしまえばアッサリ切れるし、心と体を壊してまで無理に続ける必要なんてない。真面目すぎて、要領悪くて、それをいいように使われてしまうタイプこそ、この本は必読だと思う。

文=きなの。

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