学生時代に読みたかった…! 知られざる参考書出版社の世界を描く話題のコミック『ガクサン』が面白い!

マンガ

更新日:2022/4/27

ガクサン(1)
ガクサン(1)』(佐原実波/講談社)

 コロナ禍でさまざまなことが「オンライン」化した現在。会社の会議はリモート化し、学校教育さえオンライン授業がかなり増えている。場合によっては、ひとりで黙々と勉強を進めている生徒だっているだろう。そういうとき、役に立つのが「学習参考書」だ。参考書は日々の学習をサポートしてくれる心強い存在であり、学生をはじめお世話になっているという人も多いはず。しかし、である。中には「まったく成績が上がらない」とお悩みの向きもあるかもしれない。実は、参考書を使っても成績が上がらない理由は「自分に合った参考書を選んでいない」可能性が──。『ガクサン(1)』(佐原実波/講談社)は参考書の世界を扱った珍しいタイプの漫画で、本書を読めばもしかしたら「自分の求める理想の参考書」が見つかるかもしれない。

 本書の舞台は「いぶき社」という、中堅学習参考書出版社である。そこへ中途採用で入社した「茅野うるし」はミーハー心で応募してたまたま受かっただけの、学習参考書知識ゼロの女子。そんな彼女が配属されたのが、会社でもハレモノ扱いの「福山」だけの部署「営業部お客様ご相談係」であった。実はこの福山という男、学習参考書の知識はまさに「博識」であり、他者からは「歩く資料室」とも呼ばれていた。しかしコミュニケーション能力が皆無であり多くの編集者と衝突を繰り返した挙句、この部署が与えられたのだ。いわばうるしは、福山と関係各所の潤滑油役であり、「福山のお守り役」だったのである。

 つまり本作は「参考書シロウト」のうるしや参考書のお客さんたちが、「歩く資料室」福山の解説を経て参考書の何たるかを学んでいくという流れになっている。これは参考書初心者の読者たちにとっても、非常に分かりやすい構成だ。たとえば、福山は成績の伸びない生徒に対し「参考書での勉強の基礎」として以下の3つを挙げている。

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STEP1.解説を読む
STEP2.問題演習をする
STEP3.潰す

 1や2については多くの人が実践していると思われるが、一番重要なのは3だと福山はいう。「潰す」とは間違えた問題に付箋を貼り、解説を読んで理解してから翌日~数日後にもう一度解き直すこと。ここで即答できないなら付箋は外さず、また同じ手順を繰り返すのだ。そうやって「できないところを潰す作業」こそが重要なのである。

 そして福山はさらに「『大人』でなければ参考書で勉強する資格はない」とも言い放つ。これは別に年齢のことをいっているのではない。日々の勉強はキッチリとスケジュールを立てて毎日こなしていくことがとても重要になる。そして福山は「これはガキにはできないことだ」と言い放つのである。なるほど、これは学生に限らず大人にも響く言葉かもしれない。

 ちなみに福山たちのいぶき社は架空の会社だが、本作に登場する参考書はそうではない。旺文社や学研プラスなど、実際に参考書を出版している会社の参考書が取り上げられているのだ。もちろん参考書には、福山のいうように「自分に合う合わないが絶対ある」と思うので、さまざまな本を比較してもらうのが一番だろう。しかしどうしても考えがまとまらないときは、本作で紹介された参考書を試してみるのもよいかもしれない。私自身の感想としては「学生時代にこの漫画と出合いたかったなぁ」と思わずにはいられない良書であった。

文=木谷誠

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